2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年12月18日

 去る12月15日、中国の習近平政権が樹立してから1カ月余が経った。その間における中国の国内状況を見ると、新政権を取り巻く社会情勢が実に深刻なものであることがよく分かる。

 政権発足からわずか10日間で、国内における大規模な暴動事件が3件も発生した。まずは11月17日、習近平総書記自身がトップを務めた福建省寧徳市で、地元警察の汚職を疑う市民ら約1万人が暴動を起こして警察を襲った。そして20日、浙江省温州市郊外の農村で、変電所建設に反対する地元住民1000人以上が警官隊300人と衝突し、200人が負傷した。その翌日の21日、今度は四川省広安市隣水県で、地元公安当局に抗議する住民1万人余りの暴動が起きた。公安当局の車が数台破壊され、20人の市民が負傷した。

暴動を起こしたくてうずうずしている「予備軍」

 政権発足直後の暴動の多発は、指導部人事に対する人々の絶望の現れの側面もあろうが、暴動に至るまでの経緯やその原因を見てみれば、その背後にあるのはやはり、今の体制と社会状況全体に対する国民の強い不満と反発であることが分かる。

 たとえば広安市隣水県で起きた暴動の場合、オードバイを運転していた住民が警察に殴られたことが事件の発端である。寧徳市の暴動の場合、1件の交通事故の発生が地元警察の汚職疑惑をもたらしたことがすべての始まりだ。普通の国ではおよそ「暴動」と結びつけることの出来ない、警察による暴力沙汰や汚職疑惑が、中国では1万人以上が参加する暴動発生の十分な原因となりうるのだ。

 言ってみれば、人々は何らかの切実な理由があって「やむを得ず」暴動を起こしたというよりも、むしろ暴動を起こしたくてうずうずしている中で、ちょっとした口実でもあればすぐそれに飛びついて一暴れするのである。おそらく中国のどこの町でも、このような危険極まりのない暴動予備軍は常に万人単位で存在しているのであろう。それは常に、習近平体制にとっての深刻な脅威となるのである。

2億人にものぼる「流動人口」とは?

 このような暴動予備軍を生んだ原因とは何か。2012年10月に中国政府によって公表されたある数字を見てみればすぐに分かる。

 2012年10月6日、中国の各メディアが国家人口計画生育委員会近日発表の「中国流動人口発展報告2012」の主な内容を伝えた。それによると、2011年末に中国全国の流動人口が史上最高の2.3億人に達しており、その8割は農村戸籍を持つ者で、平均年齢は28歳であるという。


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