2024年12月2日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年2月12日

 中国海軍の艦船が沖縄県・尖閣諸島沖で海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射していたことが分かり、日本政府は2月初め、不測の軍事衝突を招きかねない「危険な行為」として中国側に抗議した。これに対し、中国国防省は「照射したのは監視用レーダーだ」として日本側の発表を全面否定し、中国外務省の美人スポークスマン、華春瑩副報道局長は8日「日本のねつ造」と言い放った。

 日本の軍事筋によれば、両レーダーは周波数や波形がまったく異なり、混同することはあり得ない。中国側の思惑と、尖閣諸島の国有化をめぐる日中対立が今後どうなるのか、を検討した。

レーダー照射は、なぜ危険か?

 小野寺五典防衛相によると、中国海軍のフリゲート艦は1月30日、約3キロ離れた海上から護衛艦「ゆうだち」に射撃管制用レーダーを数分間照射した。1月19日夕にも東シナ海で、別の中国フリゲート艦から、護衛艦「おおなみ」から飛び立ったヘリコプターに対して同レーダー照射が疑われる事案があった。

 レーダー照射は、ミサイルや火砲を発射する前段の手順であり、目標までの距離や目標の動きを測定し照準を合わせる機能を持つ。精度は極めて高く、レーダー照射後に発射すればミサイルや火砲は正確に目標に向かって飛んでいく。

 狙われた方はレーダー照射によって警報が作動するため、撃たれる前に撃つ判断をすることもあり得るから、レーダー照射は実に「危険な行為」。日本政府が中国に対して厳重に抗議し、再発の防止を求めたのはもっともだ。

現場の暴走? 中国軍の“前科”とは

 レーダー照射は、国際的な軍の行動規範からかけ離れた非常識な行為だが、習近平・中国共産党総書記(党中央軍事委員会主席)をトップとする中国指導部の指揮で行われたのか、海軍の現場の判断なのかは分からない。

 だが、軍事筋は「おもちゃを見せびらかすような子どもっぽい行動であり、習指導部の指示があったとは考えにくい。ヒロイズムやナショナリズムの感情にかられた現場の軍人が勝手にやったのではないか」と推測する。

 2005年9月と10年4月には、中国の軍艦が海上自衛隊のP3C哨戒機に砲身を向けたり、照準を合わせた“前科”もあった。同月には中国海軍の艦載ヘリコプターが警戒監視中の海自護衛艦に約90メートルまで接近するという危険行動もあった。

 また、01年4月には南シナ海で米海軍の電子偵察機EP3(乗員24人)が中国軍の戦闘機と接触、中国機は墜落し米機が中国海南島に緊急着陸する事故も起きた。中国機の若いパイロットが米機と並んで飛行しながら主翼を揺すって、中国領空近くから離れるよう警告していたところ、接近しすぎて接触したのだ。米軍機内は中国人パイロットの“蛮行”にパニック状態になったという。


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