証拠データの開示と、装備の機密保持は表裏一体
事実はうやむやに終わるのか
射撃管制用レーダーの照射は、現場の暴走だったかもしれないが、国防省と外務省が歩調を合わせた完全否定は、習近平指導部が指揮した対応策に違いない。射撃管制用レーダーの使用を認めれば、中国は国際世論の批判にさらされて不利な立場に陥る。ここは「監視用レーダーだった」と虚偽の主張をし続け、水掛け論に持ち込み、事実をうやむやにしてしまう戦略だろう。
小野寺防衛相は9日の民放テレビ番組などで、日本政府としてレーダー照射の証拠データの開示を検討する方針を表明し「どこまで表に出していいか、政府部内で検討している」と述べたが、護衛艦の装備の機密にかかわることでもあり、データ開示するかどうか難しい判断を迫られそうだ。
海上自衛隊に「危機回避メカニズム」を
防衛相は、自衛隊と中国軍の艦艇、航空機による事故や事実誤認による偶発的な衝突を防ぐ「海上連絡メカニズム」構築に向けた協議再開を中国側に提案したことも明らかにした。日中両国は同メカニズムの一部運用開始を目指していたが、尖閣国有化に絡む対立によって、協議は途絶えたままだ。
今回のレーダー照射事件は、日中対立が続く中、東シナ海では中国の海軍と海上自衛隊が東シナ海で激しいつばぜり合いが起きていることを浮き彫りにした。軍事筋は「海上自衛隊は危機回避メカニズムもなく、一触即発の厳しい状態に置かれている。冬の海で現場は大変な苦労を強いられている」と述べ、不測の衝突を防ぐ態勢を早期に確立する必要性を指摘した。
二つのメッセージをどう解読するか
「中国から届く二つの異なるメッセージをどう解読するか、難しいところだ」――。日本の外交筋はこう本音を明かした。一つは昨年末の第2次安倍政権発足後に顕著になってきた「対話によって関係修復を図ろう」という前向きな呼び掛け。もう一つは中国海監の監視船の領海侵犯継続やレーダー照射などによる強硬な態度の表明である。
二つのメッセージは中国お得意の「硬軟両様の策」とも読めるが、中国政府内のタカ派とハト派の主張がそれぞれ表れている可能性もある。
「中国の公船は釣魚島(尖閣諸島)の領海に入る。なぜなら日本の尖閣国有化により、領有権争いの棚上げはなくなったからだ」。北京の政府筋は安倍政権との対話に積極姿勢を示しながらも、中国公船の活動は停止しないと断言した。