レーダー照射を公表した安倍首相の狙い
中国軍艦の射撃管制用レーダー照射は、今年1月が初めてではなく、過去にもあったとの見方も根強い。今回、防衛省の発表は2月5日であり、発生日からかなり遅れた。外務省は同日昼すぎに事実を知らされ、あわてて中国に対する抗議の準備を行った。
軍事筋は「レーダー照射があれば、危険情報として自衛隊内ではすぐに情報を共有するが、公表するかどうかはまた別だ。対中関係に与える影響などを総合的に判断して政府のトップが決める」と語った。
安倍晋三首相がレーダー照射の公表と対中抗議に踏み切ったのは、中国の“粗暴さ”を国際社会に暴露して国際世論を味方につける一方、中国をけん制して、尖閣をめぐる日中対立で優位に立とうとの狙いだろう。
「領有権主張の果てに他国に脅威を与えてはならない」「アジア太平洋の安全保障のために米日韓は必要な全てのことをやる。中国がこれを認識することが極めて重要だ」。パネッタ米国防長官が翌6日、射撃管制用レーダー照射に関連し、中国に強く自制を要求したのは、安倍首相の狙い通りだった。
中国の逆ギレ
これに対して中国側の“反撃”が始まったのは8日。国防省はインターネットの同省サイトに文章を掲載し、照射したレーダーは2回とも「射撃管制用ではなく、監視用」と釈明し、日本が「中国の脅威」を喧伝していると批判した。
文章はまた「近年、日本側の艦船と航空機が近距離で中国海軍の艦船と航空機を追跡監視していることが、中日の空と海の安全の問題の根本的な原因だ」と逆ギレしてみせた。
外務省の華副報道局長は前日の会見では「(外務省として)具体的な状況は把握していない」と述べていたが、8日の会見では、国防省と歩調を合わせて、レーダー照射について「日本は手の込んだ虚偽を発表して中国のイメージをおとしめ、中国脅威論を言い立てている」「日本の狙いは何か。その意図に強い警戒を抱いている」と強い口調で日本を非難した。