中国機初の領空侵犯により、尖閣危機も新たなフェーズに突入した。
領海侵犯も後を絶たず、中国が巡視船の数で上回るのも時間の問題だ。
日本の警備態勢は非常にお寒い状況と言える。
海上警備活動を制限する現行法の見直しや新たな法整備を進めるとともに、
海保、警察、自衛隊の連携強化や合同訓練を行うことが重要になる。
中国が主張する南京大虐殺から75年目の2012年12月13日、沖縄・尖閣諸島の魚釣島領空に1機のプロペラ機が侵入した。中国国家海洋局の所属を示す「中国海監」と書かれた航空機は、周辺海域で警戒する海上保安庁の巡視船の目を盗むように、同島南方から低空で忍び寄ってきた。「飛行高度やルートから判断して、中国空軍と連携した行動」と防衛省幹部は指摘する。中国機初の領空侵犯─。それは尖閣危機が新たな段階に突入したことを意味している。
抗日戦争の英雄を父に持つ習近平氏が中国共産党のトップに就いた段階で、尖閣諸島の実効支配を巡って12年9月から続く日中のせめぎ合いは、いずれ領空までエスカレートすることは容易に想定されていた。それでもこれまでは、中国は「海監50」などの大型巡視船を出動させた場合でも、後部甲板に艦載ヘリの姿はなく、ヘリを収納する格納庫のシャッターも閉じたままだった。自衛隊幹部は「尖閣を巡るつば競り合いは、領海にとどめておこうという中国のメッセージだと受け止めていた」と話す。
12年11月の中国共産党大会と日程が重なった日米共同統合演習(キーン・ソード)で、東シナ海に浮かぶ沖縄県西方の無人島を使った米海兵隊と自衛隊との上陸演習を中止したのも、習氏の就任と同じ時期に火種を増やしたくないという日米両政府の配慮でもあった。だが、その思いは裏切られ、中国は総選挙直前の政治空白を狙って、領空侵犯という強攻策を仕掛けてきた。
トップの座について以来、習氏の口から出る言葉は「中華民族の復興」など民族主義を鼓舞するスローガンばかり。英雄の息子という以外、確固とした正統性に乏しい習氏にとって、尖閣を巡って日本との対立をあおり、「強国強兵」を旗印に民衆の不満を外に向けるやり方は、自らが国内を統治していくために極めて有効な手段となるに違いない。
何もできない日本の警備態勢
尖閣危機が長期戦となるのは必至で、今後、起こり得る中国の挑発行為や侵略行動を想定しながら、日本は領土を守り抜くための問題や課題を克服しなければならない。