WEDGE REPORT

2013年1月21日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学総合科学研究所教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛省・自衛隊を取材。民間人で初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)を修了。解説部長兼編集委員等を経て現職。著書は『自衛隊、動く』(ウェッジ)等。

 残念ながら、それだけでは海保と自衛隊のシームレスな警備態勢を確保することは難しい。その1つは海上保安庁法25条の規定だ。要約すれば、「海上保安庁やその職員は軍隊として組織され、軍隊の機能を営むことはしない」という内容だが、真逆の内容が自衛隊法にある。それは80条の「海上保安庁の統制」で、自衛隊に防衛出動または治安出動が命じられた場合、「海上保安庁の全部または一部を防衛大臣の統制下に入れ、防衛大臣にこれを指揮させる」と規定されている。

海保・海自間の致命的な連携欠如

 なぜ、こうした矛盾した規定が存在するのか。それは戦後まもなく、海保は海上警備や日本周辺に遺棄された機雷を除去するために創設されたが、旧海軍軍人が多く登用されたため、25条を設け、再軍備ではないことを明確にする必要があったからだ。その後、自衛隊が発足、この矛盾が指摘されるような事態は生起しなかったが、99年、能登半島沖で北朝鮮の工作船事件が発生、海保の巡視船と海自の護衛艦が工作船を追跡、対処する場面で、指揮命令の一本化など様々な問題点が浮上した。しかし、国会で議論されることはなく、矛盾は放置され続けてしまった。

 こうした矛盾によって、海保と海自の連携も妨げられている。それを浮かび上がらせたのは、2011年3月の東日本大震災の救援活動だ。

 海自と海保は多くの護衛艦と巡視船を出動させて、行方不明者の捜索や救助、救援活動に当たった。海自のすべての艦艇は海自の補給艦から洋上で給油を受けて活動していたが、海保の巡視船は燃料が少なくなる度に近くの港まで戻らなければならなかった。海自の使用燃料が軽油で、海保が軽重油という違いはあるが、それは微々たることで、巡視船の給油口のサイズが補給艦の給油管に適合しないことが、給油できない理由だ。燃料が減る度に現場を離れるという活動効率の悪さは、緊急時には致命的でもある。

 現在、尖閣諸島の警備を続ける海保の巡視船は、燃料補給のために、交代しながら宮古や石垣島、那覇などの港に寄港している。巡視船は1000トン程度と大型とはいえ、中国船との連日のせめぎ合いという過酷な任務と乗員の体調を考えれば、寄港時に心身をリフレッシュさせることは大切だ。しかし、現場を離れれば守りきれないといった緊迫した場面で、海保に洋上給油能力がないことは許されない。今ある巡視船については、早急に給油口を改修し、新たな巡視船は、最初から洋上給油できるように建造しなければならない。

 12年12月末までに、中国船の尖閣領海への侵入は12年9月以降20回を数え、侵犯した海監など政府公船は延べ約60隻に上る。それでも海保には、警備活動に適した1000トンを超す巡視船が49隻あり、中国海監の28隻(1000トン超級)に比べ、数の上では有利な立場にある。だが、中国国家海洋局は、14年までに新たに中型と大型の巡視船36隻を運用すると公表しており、数的有利はもはや風前の灯といっていい。

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