その数日後の14日、中国人民解放軍の機関誌である「解放軍報」はその一面において、人民解放軍を指揮する総参謀部が全軍に対し、2013年の任務について「戦争の準備をせよ」との指示を出していたことを報じた。ここまでくると、発足して間もない習近平政権は完全にタカ派の軍国主義政権となっていることがよく分かる。
そしてその前後にして、国営中央テレビ(CCTV)などの官製メディアは連日のように日本との戦争を想定した特集番組を放送して軍事的緊張感をあおり、一部の現役の軍人たちも盛んに「対日開戦」という超過激な言葉を口にしてやる気満々の好戦姿勢を示した。その時の中国国内は、まさに「対日開戦直前」のような異様な雰囲気が盛り上がっていた。
「暴走」の真犯人は……
本稿の冒頭から取り上げている件の「レーダー照射事件」はまさにこのような一連の流れと中国国内の異様な雰囲気のなかで起きたものである。まず1月19日、中国国内で対日開戦のムードが盛り上がっている最中において、中国軍の艦艇が海上自衛隊のヘリコプターにレーダー照射を行った。そして1月30日、今度は海自の護衛艦に対して照射が行われたのは周知の通りである。
こうして見ると、今年1月に入ってからは、まず中国軍機による日本の防空識別圏侵入があり、そして中国軍の総参謀部による「戦争準備」の指示があり、一部の現役軍人による「対日開戦論」の吹聴もあった。この一連の流れの中でレーダー照射事件が起きたのだから、それはどう考えても、党指導部の知らないところで行われたような、一部の軍人による単独行為でもなければ軍の暴走であるわけもない。軍の総参謀部も「開戦論」の現役軍人たちもレーダー照射を行った現場の中国軍艦艇も全部、習近平氏本人を頂点とする党中央軍事委員会の指揮下で行動していると見てよい。「暴走」しているのは軍ではなく、まさに習近平氏その人なのである。
そして習近平政権はどうして、このような対外的「暴走」に走り出したのか、という問題となると、その答えはすでに、本コラムで去年12月18日に掲載した、「習近平政権発足後も多発する暴動、2億人の現代流民と本格的な尖閣危機の到来」にあるのでぜひご覧いただきたい。
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