この熱き人々

2013年4月12日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 「直線の地上絵も中心点から放射状に広がって描かれています。インカ帝国の首都クスコでは中央に大きな太陽神殿があり、そこから放射状に328個以上の小さな礼拝所が41の方向に並んでいるんです。発音に基づく文字ではなく、色や数や形の組み合わせ、建物やその配置に必要なデータが組み込まれていて、そのコードがわかれば組み込まれた情報が読めるようになるのではないか。クスコは町自体がピューマの形をした巨大な地上絵で、広場がピューマの体の真ん中、シッポの地区にはケチュア語でシッポという名前がついている。地上絵と動植物と放射状が組み合わさって文字のような役割をしていたのではないか。ナスカで見られる現象は、ナスカだけでは読み取れないんです。アンデス3000年の歴史の中で見ていくことで初めて読み解くことができる」

 これから目指すテーマを語る坂井の声はだんだんと熱っぽくなっていく。そしてその後で「古代アンデスの人たち、何を考えていたのかなと思う」とぼそっと付け加えた。

 地上絵に隠された謎を読み解く先に、坂井が見ているものは人間だったのか……。

 「今を生きているわれわれの考え方と古代アンデスの人を比較しながら、こんなに違うけどこんなに似ているところもあると発見していく。人間って何なのかというのが僕の基本的な関心なんです。それをフィールド学問で追うのは楽しい」

 坂井が追っているのは、ナスカ期を生きた人たち。現在ナスカで生きる人たちは、水路を作り、水を引けば畑になり、生活が潤う。が、アスパラガスやサボテンの畑が拡大していくと、地上絵は消えていく。現に周辺開発による消失も確認されている。

 「一方的に遺跡は大切だと主張しても伝わらない。これがどういう意味があるのか、彼らにとっても誇りにならなければ、多分、どんどん消えていく。研究結果や情報を学者間だけでなく地元の人と共有していく。その努力が必要なんですよね」

 坂井が立っているのは、まさに古代アンデスの人たちと現代アンデスの人たち、日本とナスカ、気の遠くなるような時と距離をつなぐセンターポイント。研究を未来につなぐために、学生の指導にも力が入る。ナスカ研究所の開設で研究環境が格段によくなり、ペルー文化省との連携も強化され、坂井は年に何度も、地球の表裏を往復する。

(写真:川上尚見)

坂井正人(さかい まさと)
1963年、千葉県生まれ。山形大学人文学部教授。東京大学大学院在学中にナスカ地上絵の研究に着手。2004年に発足した山形大学「ナスカ地上絵プロジェクトチーム」のリーダーとして人工衛星画像を基に現地調査を実施し、地上絵の正確な分布図作成を進める。06年には新たな地上絵100点余りを発見、地上絵研究の第一線を走る。

◆「ひととき」2013年4月号より

 

 

 

 
 

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