解体 ロシア外交

2013年4月15日

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 地中海の島国であるキプロスの金融財政危機は世界の経済を揺るがした。アベノミクスの影響で活況を取り戻しつつあった日本の株価や為替にも影響を与え、まさに小国が世界経済の台風の目になったのだった。

 だが、この危機、陰の主役はロシアだとも見られている。実際、EUのキプロス救済策が厳しい内容になった背景にはロシアの存在があると言われており、また本危機を経て、特別な関係だと見なされてきた独露関係にも亀裂が入るなど、ロシアの外交路線にも大きな影響が出てきているのである。

キプロス人口の1割を占めるロシア人

 地中海の小さな島国・キプロス。意外なことにロシアとの関係は深い。

 キプロスはそもそもとても複雑な国家である。地政学的な要衝として、古くから、ギリシャ、トルコ、エジプト、イスラエルなどと複雑な関係にあっただけでなく、現在は分断国家となっている。いわゆる「キプロス」は、ギリシャ系住民が多く住み、EU加盟国であるキプロス共和国だが、その首都ニコシアは南北に分断されており、キプロス島の北部はトルコ系住民が住む「北キプロス・トルコ共和国」(トルコ共和国のみが承認している未承認国家)となっている。

 さらに、キプロスはかつて、英国の植民地であったが、独立条件の一つとして英国の軍事基地の維持があったことから、現在、軍事基地がある地域は、英国の治外法権となっている。

 キプロス政府の2011年の統計では、ロシア出身者の同国に占める人口は10,520名とされるが、実際はその約10倍の10万人程度が在住しているとも言われる。2011年の同国人口は1,116,564であるので、1割近くをロシア人が占めていると考えても良さそうだ。ロシア人の定住が始まったのは1990年代と言われるが、定住するロシア人以外にも、観光やビジネス目的の旅行者も多数訪れ、特に、夏は数週間以上の長期バカンスを過ごす者も多く、特にロシア人の半数以上が住むと言われるリマソールでは、ロシア語の浸透率が非常に高く、ロシア人の美人コンテストなども開かれるほどだ。

ロシア支援を求めてきたキプロスに冷ややかなEU

 ロシア人にとってキプロスが魅力的な理由はいくつかある。まず、キプロスはギリシャ正教国家であり、ロシア正教を主に信仰するロシアとは、正教文化を共有している。加えて、ロシアとトルコは歴史的に(特に18-19世紀に)勢力圏争いを繰り広げ、ついには露土戦争にまで至った経緯があり、ソ連・ロシアはキプロスとトルコの関係においても、キプロスを支持してきた。冷戦期も、ソ連は西側陣営のギリシャ、トルコ両国と微妙な関係だったキプロスに接近し、フリストフィアス前大統領ら多数のエリートがソ連に留学した経緯がある。

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