WEDGE REPORT

2013年6月10日

»著者プロフィール

 今、東京の中野がサブカルチャーの街から学生街、ビジネス街へと変わりつつある。中野駅近くの再開発地区に4月から明治大学など2大学がキャンパスを新設。キリングループ各社の本社も移転し、昼間人口は2万人増える見込みだ。街の変化を契機に民間の手で設立された中野区観光協会が、区から補助金を受けず、独自のアイデアで中野の街を盛り上げている。

中野区観光大使は公募で8人を選んだ。ミュージシャンから“地下アイドル”まで顔ぶれは多彩

 観光協会といえば地元自治体が立ち上げ、人も補助金も出すケースが多い。だが、中野区観光協会は行政が関与しない完全な「民」の団体だ。区内商店街の若手経営者が設立を呼びかけ、2012年6月に設立。メンバーは地元企業の経営者や外国人向けゲストハウスの管理人、公務員、デザイナー、酒卸、IT関連などと様々で、全員がボランティア。各々が持つスキルをうまく組み合わせて活動している。

 2月には、大学生の引っ越しが始まるのを見越し、「新学生新生活応援マップ」を発行した。チェーン店ではない飲食店や雑貨店、銭湯や美容室など80店を載せた。制作には大学生も加わり、彼女らの生の声を反映させてつけまつげの店も加えた。

 この観光協会の特徴はしがらみのなさにある。行政からも地元商店街からも縛られず、自由に活動できる。マップの掲載店もメンバー自らが選んだ。その多くが地元住民のため、利用者の目線で「本当に紹介したい店」を載せている。店からは一切広告費を徴収していない。公平性を保つために全店掲載といった商店街発行マップとは違う。

 アイデアを形にするのも早い。区内の桜並木を「冬も明るくしたい」との一言から生まれたのが、「冬のさくら はじめの一本」プロジェクト。新しい取り組みに地元自治会では当初、反対ムードが強かったが、地元経済団体の要職を務める宮島茂明理事長が説明に回り、最初の一言からわずか2カ月間で桜1本のライトアップに結びつけた。今冬からは広く募金を集め、区内各所で「冬のさくら」を点灯させる予定だ。

 宮島理事長はメンバーに「自由に楽しんでやろう」と呼びかける。メンバーが生活者の視点で本当にやりたいこと、必要なことを考えてアイデアを出し合う。イベントの企画でも宮島理事長は「まずチャレンジしてみよう。後の責任は取る」とまで言う。最近、ここまで言い切れる公的団体のトップは少ないだろう。こうした姿勢だからこそ、メンバーはやりたいことに楽しく突き進めるし、自ら楽しむことができる。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る