2024年11月1日(金)

World Energy Watch

2022年8月25日

既存原発の運転期間が短い日本

 廃炉決定済みのものを除くと日本には33基の原発がある。その内10基は再稼働済み。原子力規制委員会の新規制基準に適合し再稼働を待っているものが7基、現在審査中のものが10基ある。さらに、現在建設中の原発が3基ある。

 福島第一原発事故後、原発の運転期間を原則40年とするルールが定められ、1回に限り20年を超えない範囲で延長が認められることになった。既に、4基が60年運転の認可を得ている。

 このルールに基づくと、建設中の3基が2030年に運転を開始し、かつ全ての原発が60年運転の認可を得るとの前提でも、2030年36基で3722万kW、40年32基で3365万kW、50年23基で2374万kW、60年8基で965万kWと減少する。

 脱炭素のため、再エネ電源で原発の減少分を補うとすると、将来の再エネ設備のイノベーション、蓄電池価格の下落に期待するとしても、電力供給の不安定化と価格上昇の可能性が高まる。

 安定的な低炭素電源として原発を活用するためには、既に米国が認可している80年運転も視野に入れる必要がある。そのため既存設備の運転期間の延長が検討され、新増設も検討される。米国バイデン政権は既存原発の運転と原発新増設に関する支援策を「インフレ抑制法」に織り込んでいる。

原発支援に乗り出す米国

 米国で8月16日に成立した「インフレ抑制法」には、気候変動対策に関する予算3690億ドル(約50兆円)が含まれている。再エネ設備あるいは、電気自動車に対する補助制度に加え、原子力発電と水素製造に関する新制度も導入された。

 シェール革命により天然ガス価格が大きく下落した米国では、天然ガス火力がコスト競争力を増し石炭火力発電所からシェアを奪っている(図-4)。コスト競争力のある天然ガス火力発電に対抗し、脱炭素に向け低炭素電源の維持と新設が必要になる。そのため助成制度が導入された。原子力発電に関する制度の概要は以下。

・24年から32年まで、既存の原発は1キロワット時(kWh)当たり最大1.5セント(約2円)の補助金を得られる

・原子力を含む二酸化炭素を排出しない発電設備が25年以降に運転を開始する場合には10年間に亙り1kWh当たり2.5セント(インフレ調整あり)を得られる。32年あるいは22年時点の電力部門からの排出量が75%減少した時点で制度は廃止

・二酸化炭素を排出しない発電設備が25年以降に運転を開始した場合には、投資額の30%が投資税額控除として認められる。投資税額控除は、22年時点の電力部門の排出量が75%減少するまで適用される

・SMRに使用される新原子燃料の開発に7億ドル、原子力発電の研究開発に1億5000万ドルの予算が当てられる

 原子力関連に加え、水素製造でも助成制度が導入された。現在、水素は主として天然ガスから製造されているが、製造時に二酸化炭素が排出される。二酸化炭素排出量を抑制する水素製造装置の建設を33年までに開始すれば、製造する水素1キログラム当たり最大3ドルの補助を得ることができる。


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