いま日本着の発電用の石炭価格が史上最高値を付けているが、8月中旬から欧州連合(EU)のロシア産石炭輸入禁止が開始されたことから、今後石炭価格は高止まりが続くことが予想される。石炭価格は今まで他の化石燃料よりも安く、石炭火力は電気料金の抑制に貢献していたが、これからしばらくは石炭が電気料金を引き上げることになりそうだ。
日本の電源構成における火力発電比率を引き下げなければ、価格が上昇し高止まりが予想される化石燃料による電気料金の値上げが避けられない。料金の安定化のため原子力規制委員会の審査が通った7基の原発の運転を急ぐのは当然の選択だろう。地元の理解を得るため政府の努力も当然必要とされる。
冬に高まる停電危機回避のために
ここ数年電力供給の不足が予想され節電が必要な事態に時々見舞われるようになった。導入が続く太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる発電量の増加が、火力発電設備の利用率低下を招き、採算が取れなくなった火力発電設備の休廃止が進んでいるためだ(繰り返される停電危機 日本はどこまで没落するのか)。
事業用太陽光発電設備の導入容量は5000万キロワット(kW)を超え(図-2)、電力事業者が保有する石炭火力発電設備容量に並んだ。石炭火力発電所は燃料があればいつでも発電できるが、太陽光発電設備は日が照らなければ発電できない。このため特に冬季の電力需給が問題になるようになった。
かつて日本の電力供給に不安があるのは、真夏の高校野球開催時期の午後2時あるいは3時の時間帯だった。多くの消費者がエアコンを付け、高校野球をテレビで観戦するため電力消費量が上昇したからだ。時代は変わった。
いま、供給不安が多く発生するのは冬季になった。太陽光発電設備は日没とともに発電できなくなるが、冬季の電力需要は夏場と異なり、家庭で照明、エアコン利用が増える日没後の夕方にピークになり、電力供給量が不足する心配があるからだ。
太陽光発電設備が多い九州電力の冬季の電力需給をみれば需給のパターンが分かる(図-3)。安定的に発電可能な設備が必要だ。