患者もつくる 医療の未来

2010年3月20日

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勝村久司 (かつむら・ひさし)

高等学校地学教諭、元厚生労働省医療安全対策検討WG委員

1961年生まれ。京都教育大学理学科卒業。高等学校地学教諭。1990年、陣痛促進剤による被害で長女を失い、医療事故や薬害などの市民運動に取り組む。厚生労働省の中央社会保険医療協議会や日本医療機能評価機構の産科医療補償制度再発防止委員会などの委員を歴任。2015年8月より群馬大学附属病院で腹腔鏡等で死亡事故が相次いだ事件の医療事故調査委員に就任。著書に『ぼくの星の王子さまへ』(幻冬舎文庫)、共著書に『どうなる!どうする?医療事故調査制度』(さいろ社)など。

2010年4月から、全国の医療機関に対し、医療費の明細がわかる領収書を全ての患者に無料で発行することが原則義務付けられる。この「無料かつ全員への開示」は、医療界に大きな転換を迫るものだ。明細書発行は、医療界が築き上げてきた密室性を変革し、国民と医療界が協力して医療のあるべき姿を模索する時代を拓く。

 日本の医療界は、これまで患者に医療費の明細を見せてこなかった。代金を支払う者に対して詳細を教えない世界は、他にはほとんどない。

 しかし、ようやく「明細付き領収書」の発行が原則義務化されることになった。4月から病院(ベッド数20床以上)の約9割、7月から診療所(19床以下)の約5割において、患者が医療機関の窓口で自己負担分を支払う際に明細が示される。

よらしむべし 知らしむべからず

 右に示すような領収書の様式の変化を見て、読者の皆さんはどうお感じになるだろうか。医療界からは「一般の人には理解できない」「誰も読まない」との声が聞かれる。

 この背後には、「よらしむべし、知らしむべからず」という医療界の意識がある。医療は専門家に任せておけばよい、という考え方だ。

 しかし、医療費が国家財政の大きな部分を占める時代となり、医療のあり方は国民にとってもっとも関心を寄せるテーマの一つとなった。

 また、医療事故や薬害事件ではいつも、患者側の力で真実を解明していくことの難しさが高い壁になっている。何らかの不本意な医療に遭遇すると、医療界がいかに情報開示がなされていないか思い知るのである。

 さまざまな医療情報を患者に提供することを拒んできた医療の密室性に、国民は長らく慣らされてきた。「理解できないから見せなくてよい」というのは違う。「見せないから知識がつかない」のだ。それはまるで、小学生に教科書すら与えずに、読み書きできないことを責めているようなものだ。

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