2024年5月12日(日)

教養としての中東情勢

2022年10月22日

 イランがウクライナを侵略するロシアに自爆ドローン(無人機)を供与、市民の被害も目立ち始めた。イランは供与を否定しているが、弾道ミサイルの売却にも合意したと伝えられており、世界から孤立する両国の軍事関係強化に警戒感が高まっている。女性のヘジャブ着用をめぐって反政府デモに揺れるイランの狙いと思惑を探った。

プーチン大統領が7月にイランを訪問し、自爆ドローンの購入を決めたとされている(Iranian Presidency Office/AP/アフロ)      

クリミアの軍事基地から発進

 ウクライナ軍や米メディアなどによると、プーチン・ロシア大統領がテヘランを訪問した7月、イランはロシア当局に開発した無人機の性能などを説明。ロシアが購入を決め、8月からロシアへの輸送が開始された。無人機は太平洋戦争中の神風特攻隊にちなんで「カミカゼ」と呼ばれる自爆型の「シャヘド136」とより大型の「モハジェル6」の2機種だ。

 だが、供与された当初は機体の不備や操作ミスでうまくいかなかった。このため、米ワシントン・ポストによると、イランの技術顧問らが9月18日にロシア入りし、テコ入れを図った。

 ロシアは機体を塗り直し、「ゲラニ2」と命名してウクライナ攻撃に使っている。これら無人機は現在、クリミアのロシア軍基地3カ所とベラルーシから発進しているという。

 軍事専門家によると、「シャヘド136」の飛行距離は約2400キロメートル。爆薬を搭載して目標に激突、破壊するという仕組み。軍事的な効果は限定的だが、多数が同時に攻撃を仕掛ければ、防空網をくぐり抜け、標的に命中して敵に恐怖心を与えることができる。ウクライナ側によると、10月10日から11日のロシアの一斉攻撃では多数の無人機が使われた。

 無人機攻撃を受けたウクライナの首都キーウの建物では4人が死亡、うち1人は妊娠6カ月の女性だった。発電施設などのインフラも破壊された。

 ウクライナ側はこれまでに無人機220機以上を撃墜したというが、ロシア側は2400機を追加注文したとされる。イラン無人機の購入はロシア軍の保有するミサイルの在庫が払底していることを示すものと見られている。


新着記事

»もっと見る