2024年5月19日(日)

WEDGE REPORT

2022年11月10日

議会襲撃事件、司法妨害でも起訴か

 2020年の大統領選結果が上院で正式に決定した昨年1月6日、議事堂が暴徒に襲撃された事件では、トランプ前大統領の「議会に行け」という呼びかけが犯行の直接の引き金になったかが立証の焦点。

 一部法律専門家は、暴徒に呼びかけ、結果的に当選者決定の手続きを遅らせたことだけをもって、暴力で法の執行を妨害した罪にあたると主張する。有罪となれば最高で禁固20年の刑に処せられるという。

 事件直後、ワシントン連邦地検の検事補は「すべての登場人物、いかなる役割を演じた人物も、その行為が犯罪を構成することが明らかになれば起訴される」と述べ、トランプ氏について捜査していることを強調した。

 事件への扇動、教唆とは別に、襲撃事件を調査している下院特別委員会の召喚にからんで起訴される可能性もある。

 委員会は22年10月21日、トランプ氏に対して11月14日からの証人喚問、関係者との通話記録提出などを求める召喚状を送付した。トランプ氏からの回答はなく、委員会は期限を延長して交渉している。

 トランプ氏があくまでも拒否の態度を貫けば、議会侮辱罪などで訴追すべきと強硬論も台頭。事件の〝本筋〟ではないとはいえ、起訴されれば、やはりトランプ氏には大きな打撃になる。

暴動の恐れと「法軽視」批判のジレンマ

 ブルームバーグ通信によると、捜査に当たっている司法省の検事団は起訴に耐えられる証拠をすでに押さえているが、裁判所から〝政治的な訴追〟と判断されることを恐れ、ガーランド司法長官に進言できずにいるという。

 最終決定を委ねられているガーランド司法長官は、今後60~90日の間に決定する方針と伝えられる。どう決断するにしても、反トランプ勢力による暴動と法軽視との批判は避けられない。

 押収文書は現在、トランプ氏側の要請に基づく第3者の「独立管理者」によって検証されており、その終了を待てば、クリスマス前は難しいとの観測もある。米誌アトランティックによると、司法長官は、現政権の任期が切れる2025年1月までに裁判を終えるため、2023年春には起訴にこぎつけたい方針という。 

 トランプ氏が実際に起訴されれば、被告人の立場で大統領選を戦うことになる。

 法律専門家らによると、もし選挙前に有罪となれば、刑に服さなければならないが、実際は控訴、上告によって裁判は長期化するとみられる。仮にトランプ氏がホワイトハウス復帰を果たした後に有罪を宣告されたなら、弾劾裁判にかけるほかに制裁の手段はなくなる。有罪で失職すれば、刑事訴追が待っている。


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