米国中間選挙は予想外の接戦、なお最終決着をみていないが、次の号砲が早くも鳴ろうとしている。2年後の大統領選に向け、満を持してきた各候補が近いうちに続々名乗りをあげる。
訴追の危機に立たされているトランプ前大統領は11月15日にも態度を表明するという。早い時期に出馬を明言して当局に「大統領候補への起訴」を躊躇させようとの目論見が感じられる。
トランプ氏を法廷に引き出せば、支持派勢力による〝暴動〟再発の危機、見送れば、法の権威が損なわれたと批判を招く。捜査に当たっている司法省にとっては難しい決断だろう。
民主党の現職、バイデン大統領は惨敗を回避したものの支持率向上は不透明、共和党にも有力な対抗馬はみあたらない。トランプ起訴となれば、大統領候補が刑事被告人となったまま選挙運動を行い、当選という異常事態も想定される。
機密文書事件、最高で禁固20年
在任中、任期切れ後の2回にわたって弾劾裁判にかけられた前大統領の疑惑、スキャンダルは枚挙にいとまがない。現時点で起訴が現実になりつつあるのはふたつのケースにしぼられている。
在任中の職務に関わる機密文書を持ち出し、フロリダ州の邸宅に秘匿していた問題と、昨年1月6日の議会襲撃事件を扇動、教唆したのではないかとの疑惑だ。
機密文書事件では、トランプ氏によって持ち出されたことを察知した国立公文書館が2022年2月に返還を求め、15箱分が返却された。
しかし、なお隠匿されていると疑いをもった公文書館側が司法省に通報した。8月に米連邦捜査局(FBI)がスパイ罪などの容疑でフロリダの自宅を捜索、「トップ・シークレット」とのラベルが貼られた文書を含む100点以上の書類を押収した。
機密文書の持ち出し自体に加え、返却要請に完全に従わなかったことは、重罪の「司法妨害」を構成する疑いがあり、起訴、有罪となれば、それぞれ禁固10年~20年の判決が言い渡される。