米共和党は8日の中間選挙のうち、少なくとも下院で多数を制することがほぼ確実となった。この結果、対外政策面では、ウクライナ支援への影響が懸念される一方、中国に対しては、民主党以上に強硬姿勢に転じるとの見方が広がってきている。
ウクライナ支援で起こる上下院での亀裂
全議員435人が改選された今回の下院選挙では、共和党がトランプ前大統領の主張してきた「米国第一主義」に共鳴する共和党現職候補の再選のほか、新たに新人候補多数も初当選を果たし、過半数を上回る見込みだ。
ニューヨークタイムズ紙が発表した最新情勢分析によると、最終的に共和党が224議席、民主党が211議席となり、下院議長ポストも共和党が奪還する。
その結果、米国の内政のみならず、外交面でもさまざまな影響が及ぶことは避けられない。
すでに、選挙前から取りざたされてきたのが、「共和党主導下院」のウクライナに対する取り組み姿勢だ。
中でも、トランプ氏に絶対忠誠を果たしてきた次期下院議長の呼び声高いケブン・マッカーシー議員(カリフォルニア州選出)は、つい最近まで、ウクライナ援助に関するバイデン政権の「白紙手形」に正面切って異議を唱え、「援助内容を精査する必要がある」と言明するなど、慎重姿勢を示してきた。
「物価高やコロナ禍にあえぐ米国市民救済が最優先だ」とするトランプ主義(トランピズム)に立脚したもので、とくに、ペンシルバニア、オハイオなど〝ラストベルト〟(さびついた工業地帯)を抱える中西部諸州に支持者が多いとされる。
トランプ・シンパで再選を果たした極右過激派のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州選出)も去る3日、遊説先で「私たちが下院を制したらウクライナにビタ一文も出さない」と演説して全米で話題を集めている。来年1月からの新議会でこうした空気が広がった場合、バイデン政権のウクライナ援助計画がつまずくことにもなりかねない。
これに対し上院では、同じ共和党のミッチ・マコーネル院内総務がすかさず、記者会見で「ウクライナ民主体制を支えていくのは自明の理であり、米議会として極めて重要」と念を押すなど、異なる主張を展開、対外援助をめぐる上下両院での党内亀裂も指摘されてきた。
共和党の党内対立は、中間選挙後、さらに拡大する可能性もある。