8月24日、バイデン大統領は、学生ローンの借り手に対し、1人当たり1万ドルの返済を免除すると発表した。免除には家庭の年間所得制限が掛かっている。2020年3月に始めたコロナ禍に係る返済猶予の措置も年末まで延長されることになった。学生ローンの問題はバイデンの大統領選の公約であり、これまで種々議論のある問題であった。
8月24日付けのワシントンポスト紙の社説‘Biden’s student loan announcement is a regressive, expensive mistake’は、バイデンの措置は「間違っている」と正面から批判する。理由は、
①コロナによる緊急救済の必要は無くなってきている(今や学士号以上の学位を持つ人々の失業率は2%)
②バイデンの返済免除措置は逆進的だ(大学に行っていない労働者を含む広い課税層から取った税金を使って、将来高所得を得る大学卒業生を幅広く補助することになる)
③バイデンの決定は費用が掛かりインフレ的だ
④最も支援が必要な者(大学に行けない者)への支援に焦点を当てるべきで、支援を必要としない人々に税金で棚ぼた利得を与えることになる
というものだ。
この社説の主張はよく理解できる。学生ローン返済免除というのはあまり「アメリカ的」でもない。バイデンの施策のインフレ的な側面については、サマーズ(元財務長官)が以前から警告してきた。
学生の返済免除についても、バイデンの発表前の22日にインフレの悪化を招くと述べている。更にバイデンは大統領緊急権限に基づきこれを実施するようだが、これにつき批判する意見も出ている(ブッシュ、オバマ、トランプがそれを使った先例はあるが)。共和党が中間選挙で攻撃する可能性もある。
今回バイデンを動かした最大の要因は、民主党左派、若者層の強い要求とバイデンの選挙公約だった。米国の大学授業料は高騰しており、大きな社会問題になっている。