ウクライナ各地で25日、電力インフラを狙ったロシアによる大規模攻撃があった。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、クリスマス当日を「あえて選んだ」攻撃だったとロシアを非難した。
ウクライナ空軍は、ミサイルとドローン(無人機)を計184個探知したと発表。多くは撃墜されたか、標的を外れたとした。
また、この攻撃で死傷者が出たとしたが、人数は明らかにしなかった。
各地で停電が発生し、首都キーウでは住民らが地下鉄の駅に避難した。第2の都市ハルキウでは、50万人が厳しい寒さのなか、電気も暖房も水もない状況に置かれた。
ウクライナ最大の民間電力会社DTEKによると、電力施設が大規模な攻撃を受けたのは今年13回目。ゼレンスキー氏は9月、国内の電力インフラの8割がロシアの爆撃で破壊されたと述べていた。
ゼレンスキー氏は今回の攻撃について、このタイミングを「あえて選んだ」もので「非人道的」だと主張。だが「ロシアの悪がウクライナを壊すことはなく、クリスマスをゆがめることもない」と付け加えた。
また、早期の電力復旧に向けた作業が進められていると述べた。
一方、ロシア国防省は、ウクライナの「重要」電力施設に「大規模攻撃」を実施したと発表。攻撃は成功し、すべての目標に命中したとした。
ウクライナがクリスマスを12月25日に祝うのは今年が2回目。それまではロシアと同じく、ユリウス暦に従って1月7日にクリスマスを迎えていた。
ただ、かなりの人数に上る正教会信者は、以前と同じ日にクリスマスを祝う。
「クリスマスは中止しない」
ウクライナの人々はクリスマスの朝、空襲警報の音で目を覚ました。攻撃が続くなか、避難するよう指示された。
地下鉄駅に避難したキーウ市民のソフィア・リトヴィネンコ氏は、怒りと恐怖を感じているとし、「もちろん家で祝いたいが、家にいるのは怖いので避難せざるを得なかった」とロイター通信に話した。
キーウ市民のオレクサンドラ氏は、攻撃されても「クリスマスは中止しない」とロイター通信に述べ、避難指示が解除されれば家族や友人と伝統的な食べ物と飲み物を楽しむつもりだとした。
国営電力会社ウクルエネルゴは、停電は最短でも25日いっぱい続く可能性があると発表。復旧作業中の電力使用を制限するとした。
この日の攻撃について、ウクライナのアンドリー・シビハ外相は、ロシアのミサイルがモルドヴァとルーマニアの領空を通過したと説明。「ロシアが脅かしているのはウクライナだけではないと思い知らせるものだ」と述べた。
モルドヴァのマイア・サンドゥ大統領はこの攻撃を非難するとともに、同国の領空でミサイルが検知されたと述べた。
一方、ルーマニアは、自国領空でミサイルを検知していないとした。
こうしたなか、ロシア西部クルスク州ではウクライナ軍による砲撃があり、州当局者によると、4人が殺害され、5人がけがを負った。