俳優にして歌手の中山美穂さんが6日、自宅で死亡しているのが発見された。その美貌は、映画全盛時代なら大女優に匹敵する存在といわれた。
“遅れてきた美貌の女優”はタレント映画を経て、日本のみならず中国、韓国、台湾でも大ヒットした映画『Love Letter』 (1995年、岩井俊二監督)によってアジアの美少女俳優として愛された。近年はコンサート活動に力を注いで、大阪公演を直前に控えて体調を崩して休演したうえ、54歳という若さで旅立った。
彼女の死にともなうニュースのなかで、NHKが繰り返し流した90年代初めの舞台を前にしたインタビューのなかで、「女優をしているときには歌いたくなり、歌っているときには演じたくなる」と、笑顔をたたえた表情をみせている。
一人二役の感情の起伏で女優として開花
俳優としての才能に目覚めさせたのは、岩井俊二監督の『Love Letter』である。黒木華さんと蒼井優さん、伊藤歩さん、そして中山美穂さんら、映画やドラマに登場する女優の中からその才能を見出すことにかけては、岩井監督は卓抜な眼をもっている。『Love Letter』は、岩井監督にとって初の長編映画だった。
神戸に住んでフィアンセの藤井樹を登山の遭難で失った博子(中山さん)は、彼がかつて住んでいた小樽の住所を、彼の実家にあった中学校の卒業アルバムから知る。フィアンセを宛名にして、いたずら心で手紙を書いてみる。思いもよらず返事がくる。
藤井樹と同性同名の小樽に住む図書館勤務の女性・樹(中山さんの一人二役)からだった。博子のフィアンセと小樽の樹は、中学校の同級生だった。神戸と小樽の間で手紙の往復が続く。
神戸の博子は、結婚を申し込まれている男性がいる。フィアンセが亡くなった登山に同行した、ガラス工芸家の秋葉茂(豊川悦司さん)である。しかし、フィアンセの樹の死を彼女は受け入れられずにいる。
小樽の樹との手紙のやりとりから、博子が知らないフィアンセの樹の少年時代が浮かび上がってくる。「藤井樹」という同性同名のために、女子生徒の樹が同級生に冷やかされたり、困らせられたりするエピソードが映像で展開されていく。