2024年12月13日(金)

田部康喜のTV読本

2024年2月16日

 「不適切にもほどがある!」(TBS・よる10時)は、クドカンこと宮藤官九郎が脚本を手がけるタイムスリップ・コメディの大傑作である。クドカンのドラマならではのパロディとギャグも満載だ。

 

 主人公の中学校の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が昭和と令和をタイムスリップしながら、現代社会の断裂の要因となっているコンプライアンスというポリティカル・コレクトネス(PC)の解決を探る正攻法のドラマでもある。

「働き方改革」の歪みをコミカルに

 野球部の根性一辺倒の監督でもある小川(阿部)は、帰宅のために中学校の裏手のバス停から無人のバスに乗り込んだときからタイムスリップは始まる。小川は1935(昭和10)年生まれ、現代なら88歳の設定である。

 バスに次々に乗り込んでくる客たちに小川は驚きを隠せない。愛煙家の小川が煙草に火をつけようとすると抗議され、女子高校生のスカートは短く、客たちは小川のいう「ひらべったい」機器つまりスマーフォンを使っている。コンビニで購入したハイライトの値段が500円を超えていることにも。

 行きつけの喫茶店に入ると、老いたマスターは客席に寝たままの状態。カウンターに座っていた乳母車を脇に置いて子どもを寝かしつけていた、犬島渚(仲里依紗)が、小瓶のビールを小さなグラスに注いだのを、小川は動揺した状態のまま飲み干してしまう。「今日一日働いてこれを楽しみにしてきたのに!」と渚は怒り出す。

 渚はテレビ局のアシスタントディレクター。アシスタントプロデューサーに昇格することになって、業務の引き継ぎに入っていた。

 後任に教えていると、夕方の時刻となると「わたしはここまでで交代です」と、別のアシスタントディレクターに同じように引き継ぎをするはめになる。「働き方改革」によって、超過勤務を回避するPCである。

 小川は渚に同情してテレビ局に乗り込む。クドカンがPCの解決策はミュージカル風のダンスと歌で提案する。ひとつの仕事をふたりで分担するには、まずひとりがすべての業務を理解してからにするなどと。


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