投票日まで1カ月と迫った米中間選挙――。共和党が勝利した場合、トランプ主導の「米国第一主義」が復活し、対ウクライナ軍事・経済援助の縮小などにより、戦況悪化を懸念する声が民主党政権下で広がり始めた。
下院は共和党過半数が支配的予想
「米議会としてウクライナ民主体制の自己防衛を支えていくのは、自明の理だ」。
ミッチ・マコーネル共和党上院院内総務は、総額400億ドル(約5兆6000億円)に及ぶ対ウクライナ大規模経済・軍事援助法案が可決、成立した去る5月19日、記者団を前にこう言明した。しかし、この日の投票では、トランプ主義を標榜する同党議員11人が反対した。
その前週の下院審議では、57人ものトランプ派議員が同法案に反対票を投じた。
ウクライナ援助反対派の主張は上下両院議員ともに一貫しており、「物価上昇、エネルギー危機などの生活苦にあえぐわが国民支援を優先すべきだ」というものだ。
そしてもし、中間選挙でトランプ氏が後押してきた共和党議員候補多数が当選した場合、対外援助批判がさらに広がり、ひいては、バイデン政権の対ウクライナ政策にも重大な影響が及びかねない。
中間選挙に向けた米メディアによる最新の有権者動向調査によると、全議員の3分の1が改選される上院見通しについては、民主、共和両党間で「いぜん五分五分」の接戦が続いている。しかし、全議員(435人)が改選される下院については、共和党過半数獲得が「ほぼ確実」との分析結果が支配的となりつつある。
共和党は下院現議席数では、多数党の民主党より9議席少なく、5議席増やすだけで多数を制することになる。例年の中間選挙では野党が平均20議席程度増やす結果となっており、よほどの番狂わせがない限り、民主党は下院議長のポストを奪われることは避けられない見通しだ。
民主党がかりに残り1カ月足らずの選挙戦で善戦し、上院でかろうじて多数を維持することができたとしても、問題は、下院を共和党に明け渡すことによる米外交への深刻な影響だ。とくに、重大視されるのが、ウクライナに対する今後の経済・軍事援助の行方にほかならない。下院はあらゆる政府予算案の先議権を握っているからだ。
もちろん、下院で否決されても上院が可決後、両院協議会をへて最終的に承認される可能性は残されている。しかし、予算規模の縮小をめぐり混乱、遅滞を引き起こすことは必至だ。そして、それはただちに、ウクライナ戦況に影を落とす。