2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2022年10月6日

積極的なウクライナ支援とその効果

 ゼレンスキー大統領が陣頭指揮するウクライナは、去る2月のロシア軍侵攻開始以来、当初は苦戦を強いられてきたものの、ここ数カ月の間に、態勢を立て直し、とくにドネツク、ルハンスクなど同国東部、南部4州において反転攻勢を強め、一部拠点都市の奪還にも成功した。こうした戦況の好転は、米国をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)諸国からの惜しみない大規模な軍事支援と切り離しては論じられない。

 とくに、米国からの援助は突出してきた。

 去る5月の400億ドル支出以降も、対ウクライナ軍事援助は途切れることなく続けられ、8月以降の拡大ぶりは、以下の通りめざましいものがあった:

・8月10日、19日の両日、ブリンケン国務長官がそれぞれ、10億ドル、7億7500万ドルの追加援助を発表。

・8月24日、バイデン大統領が「ウクライナ独立記念日」に合わせ、30億ドルに及ぶ追加支出を発表。

・9月8日、ブリンケン国務長官が首都キーフを訪問、報道陣を前に、6億7500万ドル相当の武器供与を新たに発表するとともに、さらに「長期的軍事テコ入れ」目的で22億ドルを充てる方針を明らかにした。

・9月28日、オースティン国防長官が11億ドルの追加軍事援助を発表。

・10月4日、バイデン大統領が6億2500万ドル相当の追加軍事援助を発表。

 上記のように、バイデン政権は、当初の2022会計年度国防予算規模をはるかに突破しながらもさまざまな「緊急援助」目的で矢継ぎ早に追加支出を繰り返してきた。このため、専門家の間でも、「最近に至るウクライナ援助規模は正確には把握しきれない」との声さえ上がっており、ここ数カ月の援助ペースは「1日当たりざっと1億1000万ドル程度」に達しているとの推定まで出ているほどだ。

 この点で、米国が急ピッチで軍事援助を拡大した過去2カ月の間に、当初は劣勢気味だったウクライナ軍が急に態勢を立て直し、それまでロシア軍がいったん占領、または優勢が伝えられていた南部、東部諸州において効果的な反撃攻勢に転じたことは注目すべきだ。 

 これは、タイミング的にたまたま偶然の一致とは言いにくい。

 「Defense News」などの米軍事専門紙も、「米軍を中心とするNATO側の最近の積極果敢な対ウクライナ軍事テコ入れとウクライナ軍の反転攻勢は、明らかにリンクしたものだ」との見方を伝えており、米政府当局も、米軍支援が目に見えた効果を上げ始めたことを認めている。

反転攻勢のカギを握っていた最新の武器

 とくに、武器供与の中で、ロシア軍側に手痛いダメージを与えてきたとされるのが、〝カミカゼ・ドローン〟の異名を持つ「SwitchBlade600」攻撃用無人機約800機、一発必中の精度を誇る「FGM-148 Javelin」対戦車ミサイル8500基、長射程攻撃用の「HIMARS」高機動ロケット砲システム18基などだ。これらの米軍が誇るハイテク兵器はいずれも、ロシア軍部隊の進軍を阻み、前線基地を破壊し、部隊の撤退を迫るのに大きな役割を果たしたとして高い評価を受けている。

 さらに、米軍からの武器援助で最も威力を発揮したのが、最近になってウクライナ軍側に提供された「NASAM」と呼ばれる最新型対空ミサイルシステムとされる。


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