米国中間選挙が11月8日に迫ってきた。投票日が近付くに連れ、世論調査では有権者が最も関心を持つ争点に物価上昇、インフレが浮上してきた。
バイデン政権のエネルギー政策もインフレを引き起こした原因の一つと考える有権者も多く、世論調査では共和党が徐々に支持を伸ばし、全米では民主党と支持率は拮抗している。ただし、選挙区の情勢となると下院では共和党有利の予測が多い。
気候変動問題の取り組みに熱心なバイデン政権は、カナダ・アルバータ州から重質油を米国南部に輸送するキーストンXLパイプラインプロジェクトの中止に見られるように、化石燃料の生産、関連するインフラ建設に関し冷淡な政策を導入してきた。
一方、化石燃料生産の拡大策に注力している共和党が下院で多数を握れば、原油生産量が増加し、インフレの大きな原因の一つであるガソリン価格の値下げが実現すると考える有権者も多い。
高騰するエネルギー価格は、欧州、日本でインフレを引き起こしているが、エネルギー自給率が100%を超えた米国も例外ではない。国際的な化石燃料価格の上昇を受け、ガソリン価格のみならず電気、都市ガス料金も上昇し、選挙の投票行動に影響を与えている。
選挙結果はバイデン政権のエネルギー・気候変動政策に影響を与えることになり、結果として世界のエネルギー需給・価格と各国の気候変動政策も影響を受ける。
世界中で進む物価上昇
エネルギー価格はなかなか下がらない。原油価格は、景気後退の懸念と先進国の戦略備蓄放出の動きから6月後半から9月にかけ下落傾向が続いた。ガソリン価格も少し落ち着きを見せ始めたが、依然として歴史的に高い水準にある。
1973年のオイルショック以降、エネルギー輸入国がエネルギー源を石油から天然ガス、石炭に多様化を図った結果、天然ガスと石炭、それぞれ世界の輸出シェアの約20%を握るロシアへの依存度が高まった。ロシアが化石燃料需給と価格に大きな影響力を行使できる立場を握り、石炭と天然ガス価格は高止まりが続いている。