2022年12月9日(金)

World Energy Watch

2022年10月4日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 ロシアのウクライナ侵略により、多くのことが影響を受けた。例えば、日本から欧州への航空機のルートもロシア上空を避けることになった。ロシア上空を飛んでいた時には、日本から最も飛行時間が短い欧州の都市はフィンランド・ヘルシンキだったが、9時間程度の飛行時間は今13時間になった。

(justocker/gettyimages)

 そのフィンランドでは、この冬街灯を全て消すことが検討されている。12月には日の出が9時、日没が15時過ぎになり、ラッシュ時に街灯がない状態は安全上の問題から危険との指摘もあるが、発電に十分必要な量の天然ガスがない。

 天然ガスの大半を供給していたロシアが、5月にフィンランド向け供給を停止したからだ。フィンランドは電力供給の3分の1以上を原子力、約4分の1を水力に依存しており、天然ガスによる発電の比率は5%だが、それでも天然ガス需要が高まる冬季には電力供給は厳しくなる。

 多くの欧州諸国が電力供給の厳しい冬を迎えるが、呆れるのは原発に関するドイツ政府の迷走ぶりだ。9月5日、ハーベック副首相兼経済・気候保護相は、今年末に3基の原発を閉鎖し、2基を予備として来春まで保有する形で予定通り脱原発を行うと発表したが、9月27日、同相は南部の2基を来年4月まで利用可能な状態にしておくと述べ、延長に必要な法改正を10月末に行うと説明した。 

 その理由を、「ロシアからの天然ガス供給状態の悪化とフランスの原発からの電力輸入量が減少するため電力供給に不安が生じる」と、フランスの原発の発電量の低下によるものと説明した。計画通りの脱原発の発表時、「ドイツは電力の輸出国だ。エネルギーはある」と豪語していたが、フランスからの電気がないと南部では停電の可能性があるのだ。

 供給不安が高まっている欧州では高騰するエネルギー価格も大きな問題だ。電気料金が1年間で3倍以上になった国も出ている。

高騰するエネルギー価格

 今年9月までの1年間に欧州連合(EU)諸国が電気、ガス料金などのエネルギー価格抑制に、減税、補助金などの形で投じた資金は3140億ユーロ(約44兆円)。それにもかかわらず、今年8月のEU27カ国平均の電気料金の対前年同月比上昇率は、35.7%。

 国の発電源の化石燃料依存度の違いにより、EU加盟国内では上昇率に大きな違いがある。エストニアの上昇率が205.9%とEU内で最も高くなっている。原子力発電シェア約7割のフランスの上昇率は7.7%だ。EU主要国と日本の上昇率は表の通りだ。

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