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World Energy Watch

2022年9月16日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 9月5日、ドイツ・ハーベック副首相兼経済・気候保護相(緑の党)は、現在稼働している3基の原発を計画通り今年末に停止し脱原発を実行すると表明した。ただし、緊急時に備えて2基のみ来年4月まで待機状態にすることも発表した。

(Animaflora/gettyimages)

 ドイツは福島第一原発事故後に脱原発を決め、徐々に原発の閉鎖を進めてきた。2011年に19.5%あった原発による発電比率は今6.6%まで下落しているが、脱原発を実行すれば石炭、天然ガスなどの発電用燃料消費を増やすことになる。

 コロナ禍からの経済回復に伴うエネルギー需要増の中で、昨年ロシアが欧州向け天然ガス供給量削減を開始したことで、欧州はエネルギー価格上昇による危機に見舞われた。2月24日のロシアによるウクライナ侵略により、エネルギー危機はかつて欧州諸国が経験したことがないレベルまで深まり、多くの欧州市民は未曾有と呼んでよいエネルギー価格と消費者物価上昇に直面している。

 エネルギー危機に直面した欧州諸国は、化石燃料消費量削減と価格抑制に必死だが、そんな中で脱原発を行うドイツには怒りの声が上がっている。欧州メディアで引用され、400以上リツイートされたスウェーデンの緑の党の党員のつぶやきは次だ「もしドイツが自国のエネルギー安全保障に責任を持たないのであれば、スウェーデン政府にバルト海の送電線を切断するように提案したい。連帯は誰にも傷を負わせない限り成立する」。

 ドイツは再エネからの余剰電力を輸出しているが、再エネからの電力では国内需要を満たせない時には、近隣諸国から輸入せざるを得ない。スウェーデンは水力と原発によりそれぞれ発電量の44%、30%の安定的な電力を得ているドイツへの電力輸出国だ。

 最新の世論調査ではドイツ国民の約8割が脱原発の中止を支持していた。世論にも逆らい、欧州内で怨嗟の声が巻き起こるのも分かっていた筈なのに、なぜドイツは脱原発を行うのだろうか。エネルギー環境政策に関する主要閣僚を握る緑の党の成り立ちも影響している。

変わるドイツの世論

 福島第一原発事故後2011年秋に行われた英国BBCによる日本を含めた主要国の世論調査では、ドイツのみにおいて即座の原発閉鎖支持が過半数になった。世論の動向を受け、当時のメルケル政権は22年末に脱原発を行うことを決め、徐々に原発の閉鎖を進めた。しかし、ロシアの侵略によるエネルギー価格高騰の影響を受ける国民の間では、今年末の脱原発を中止し継続利用を求める声が徐々に高まった(ドイツの脱原発が世界に迷惑をかけるこれだけの理由)。

 8月に発表された調査では、78%が来年夏までの原発の利用を、67%が5年間の利用延長を支持している。脱原発を党是とする緑の党の支持者の中でも原発の継続利用支持が61%に達した。ただし、緑の党では長期に亙る原発利用の支持は7%に留まっている。原発の新設については、国民の中で依然意見は分かれ、賛成41%、反対52%となっている。

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