2022年9月27日(火)

World Energy Watch

2022年9月16日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 ドイツの世論が大きく原発継続利用に傾く背景には、高騰を続ける天然ガス価格がある。欧州諸国の脱ロシア産化石燃料に対抗し、ロシアは欧州の脱ロシアの先手を打ち天然ガス供給量の削減を加速している。

 8月31日からはドイツに直接天然ガスを輸送するノルド・ストリーム1パイプラインを停止し供給量を一段と絞っている。そのため、欧州での天然ガス価格は高騰を続け、8月の平均価格は日本向け液化天然ガス(LNG)価格の3.5倍に達している(図-1)。

 欧州連合(EU)27カ国平均の今年7月の電気、ガス料金は、対前年同月比それぞれ31%、54%上昇した。エネルギー価格は、消費者物価指数(CPI)にも大きな影響を与え、9.8%の上昇を引き起こした。

 図-2が欧州主要国と日本のエネルギー価格とCPI上昇率を示している。エネルギー価格抑制が欧州諸国には喫緊の課題だ。

緑の党が主導する脱原発

 ドイツの連立政権の中で、緑の党はエネルギー、環境政策に関連する主要ポストを握っている。緑の党出身のハーベック副首相兼経済・気候保護相とレムケ環境・自然保護・原子力安全・消費者保護相は、今年3月に脱原発政策の見直しについて議論し、計画通り脱原発の実施を決めた。

 しかし、その後ロシアが欧州向け天然ガス供給の削減を加速したことから、原発からの電力供給がなくても冬を乗り切れるか検討するストレステストを7月から実施した。その結果が判明する直前の8月下旬、やはり緑の党出身のベアボック外相は、インタビューで脱原発に関し訊かれ次のように答えている「原発が天然ガスの問題を解決するとは思わない。脱原発のため既に多額の支出を行った。これを打ち捨てることは狂気の沙汰であり、原発の継続使用は最終的には高く付く。少しの期間、利用を継続すべきと主張している原発支持の人たちは、新増設も望むようになる」。

 なぜ原発抜きで冬の需要期を乗り切れるのか、なぜ高く付くのか、この説明では釈然としない。ストレステストの結果を受け、ハーベック経済・気候保護相は9月5日、脱原発を予定通り実施すると次の通り発表した。

 「ドイツの電力は高い安定供給のレベルにある。ドイツには十分なエネルギーがある。ドイツは電力輸出国であり、欧州電力網を構成している。最悪の場合の備えとして、送電管理者は大口需要家向け供給と輸出の中止を推奨している。原子力エネルギー法で定められている脱原発に固執する」

 原発の閉鎖を進めてきたドイツでは、工業地帯を抱える南部において電力供給が不足する事態となり、一方北部では主として風力発電設備からの電力が余る状況が生じている。南北間の送電線建設に時間が掛かっているので、南部で電力不足が生じる事態に備え南部の2基の原発を来年4月まで予備力として稼働可能な状態にしておくことも発表された。

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