ロシアによるウクライナ侵攻から半年以上が経過し、ロシア経済も変化が見られ始めている。実質賃金が4月から前年比マイナスを継続。これに伴い、小売売上高も減少を続ける。経済の屋台骨とも言えるエネルギー資源の生産量にも西側諸国の制裁の影響が出始め、財政収支もマイナスとなりつつある。
ただ、ロシア国内では「制裁慣れ」ともとれる動きがあり、財政もしばらく持ちこたえられそうだ。ロシアの国力衰退によって戦況が大きく変わるとまでは言えない状況だ。引き続きロシア経済の実態を注視しながら、プーチン政権の動きを見定める必要がありそうだ。
ジワリと影響が出ている西側諸国の制裁
ウクライナ侵攻後、西側諸国が相次いでロシア産エネルギー資源の輸入削減や禁輸を打ち出したことで、市場では徐々にロシア産化石燃料を忌避する動きが強まり、その結果、ロシアのエネルギー資源の生産量は減少に向かっている。
西側諸国がいち早く足並みをそろえて禁輸措置を決定したのは石炭だ。この制裁により、ロシアの石炭生産量は、2022年7月に前年比5.1%減となり、1~7月で見ると0.9%減少している。
原油生産量に関しては、5月に前年比2.4%減少。7月は同2.8%増となったが、これは中国やインドが輸入量を増やしたためとみられる。しかし、中国やインドにとってこうした取引量の拡大は、米国をはじめとした諸外国からの目線もあり、継続的になされるものではないとの見方が一般的だ。
また、現在ロシア産石油(原油および石油製品)の最大の輸入地域である欧州連合(EU)は6月、ロシア産石油輸入の約90%を年末までに停止することで合意している。この禁輸措置により、ロシアは原油生産の縮小を余儀なくされる見通しだ。
天然ガス生産量は、7月に前年比22%減少し、1~7月でも同7.3%減となっている。これは主に、ロシア側が、外国で修理中のタービンが、西側の制裁によってロシアに戻されないこと等を理由に、最大の輸出先である欧州向けのパイプライン送ガス量を大幅に削減していることによるものだ。しかし、同時にEUも、ロシア産天然ガスへの依存からの脱却の動きを急速に強めていることに注意が必要だ。
EUは3月に、ロシアからの天然ガス輸入量を年内に3分の2削減し、2027年までに完全に輸入を停止するという目標を掲げ、省エネやエネルギー供給源の多様化に急ピッチで取り組んでいる。天然ガスの輸送は、石油のように簡単ではないため、対露制裁に同調しない中国やインドへ輸出先を転換しようにも難しい。ロシアの天然ガス生産は、原油生産以上に、輸出市場の制約による影響を強く受ける可能性がある。