2024年12月22日(日)

プーチンのロシア

2022年6月3日

 ロシアによるウクライナ侵攻に対し、欧米諸国や日本が経済制裁を科しているのに対し、プーチン大統領は「市場にパニックを生み出す作戦は間違いなく失敗した」と強気の態度を見せた。さらに、旧ソビエト諸国が参加する経済フォーラムでの演説でも「対応を通してわれわれはより強力になっている」と強調する。実際、ロシア経済はルーブル相場が持ち直すなど、大きな経済的打撃を見せていない。

(hank5/gettyimages)

 経済制裁が効果を示さない要因として、石油や天然ガスといったエネルギー取引が継続されていることがよく挙げられるが、それだけではない。制裁が全く意味をなしていないのかというと、決してそうでもない。ロシアが講じている対策を見ながら、中長期的に及ぼすとみられる影響の実態を見ていきたい。

クリミア併合以降図っていた経済的〝自立〟

 ロシアによる経済制裁への〝対策〟はすでに6年前から始まっていた。ロシア軍が2014年にウクライナのクリミア半島を併合し、国際的な経済制裁を受けた時からだ。

 この時、米欧はロシア要人の資産凍結や渡航の制限、金融規制を実施。ロシアの主要産業であるエネルギーに関しても、北極海や北極圏での石油開発に利用する資機材や技術の輸出を禁じた。

 これに対抗する形でロシア政府は、経済を自国内のみで完結できる形を作っていった。対外債務の返済を進め、クリミア併合直前の13年12月に7288億6400万米ドルあった官民合わせた対外債務残高を21年12月には4799万6200万米ドルと、約35%減らした。

 財政健全化も図った。14年に国内総生産(GDP)比1%ほどあった財政赤字を、新型コロナウイルス感染拡大前の19年には2%ほどの黒字に転換させている。これは主に歳出の削減によるもので、原油をはじめとしたエネルギー価格の下落で税収が減ったとしても、財政赤字に陥り難い体制を構築している。

(出所)国際通貨基金(IMF)資料を元に筆者作成 写真を拡大

 


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