2024年2月26日(月)

プーチンのロシア

2022年6月3日

 企業部門でも、海外からの資金流入を得なくても事業運営ができる体制が構築されている。企業と銀行の対外債務は13年12月の6511億5800万米ドルから、3836億2600万米ドルへと、4割超減少している。これは海外からの新規融資等が行われず、返済だけが粛々と行われた中でも、事業運営の継続が可能となっていることを示す。

 日用品においても、「輸入代替政策」と呼ばれる国内生産重視の成長戦略を推進。衣料品や医薬品の輸入品比率を低下させた。これにより、ウクライナ侵攻後、一時的にルーブルが急落した際にも、インフレ率の上昇を緩和することができた。

止まる技術の流入

 ロシアは、官民ともに自国内のみで経済を完結できる〝制裁慣れ〟の環境を作ってきたと言える。ただ、そのすべてがうまくいっている訳では決してない。

 数字として表れているのが経済成長率だ。クリミア併合からコロナ禍前の19年までの間、ロシアの経済成長率はマイナスから2%台と、低迷を続けている。ロシアは、他国からの影響を受けにくい形を作ったものの、肝心の経済成長ができていないのが実態なのだ。

 今回の制裁により、この流れに拍車がかかるとみられる。大きな要因は、欧米諸国からの半導体をはじめとするハイテク製品の輸出規制だ。ロシアのこうした部品への依存度は高く、今後、在庫が尽きていけば、武器を含む工業製品の生産量は落ち込んでいくだろう。

 物資面だけでなく、「生産技術」の流入が止まってしまうことによる影響も大きい。欧米の制裁発動を受けて、外国企業のロシアからの撤退が相次いでいる。これは、先進的な生産技術の流入が止まることで、ロシアにおけるイノベーションや産業の成長力が今後5~10年という期間で大きくそがれていくことを意味する。

 この影響は、ロシアの主要産業であるエネルギーにも波及する。ロシア政府は20年6月、「2035年までのエネルギー戦略」を策定。「戦略」では、今後、原油生産量は減少も、天然ガスの生産量は順調に増加すると想定されている。原油生産量の減少が見込まれる理由の1つとして、「先端技術の導入の遅れ」が挙げられていることから、ロシア政府は、クリミア併合後に導入された欧米制裁の長期化による新規油田開発の遅れを見込んでいると思われる。

 油田開発に関する欧米制裁(北極海やシェールオイルの油田開発に必要な先端技術・資機材の供与の禁止)は、ウクライナ侵攻後、さらに強化されている。このため、上記の「戦略」の想定よりも原油の減産ペースが早まる可能性がある。ロシア経済の基幹産業であるエネルギー分野も、大きな壁にぶつかることになるのだ。


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