2024年12月24日(火)

プーチンのロシア

2022年3月30日

 「がんの治療でロシア人の友人をスペインの病院に紹介したら、受け入れを断られた。ロシアで発行されたクレジットカードが経済制裁で使用できなくなっているため、支払い能力が危ういと判断されたためだ」

 「海外の知人らと共同でビジネスを行っていたが、制裁で国境を越えた決済ができなくなり、仕事が続けられなくなった。ロシアから脱出したいが財産を捨てて逃げることもできない」

 「モスクワに残した母親を外国に連れ出したいが、国営テレビばかりを見てロシアは悪くないと〝洗脳〟されてしまっている。私も怖くてロシアに帰国できない」

 筆者に伝わってくるロシアやその周辺から聞こえてくる話の数々は、その経済、社会の悲惨な末路を予見して余りある。

ロシアではさまざまな欧米諸国の企業の事業撤退が起きている(picture alliance/アフロ)

 ロシア軍によるウクライナ侵略は依然として続き、ペースは遅いもののウクライナ南東部を中心に占領地域を広げている。ロシア国内では国営テレビが政権の都合の良い報道を続け、市民が情報をやりとりできるフェイスブックやツイッターといったSNSは次々と遮断されている。プーチン政権が名づける「特別軍事作戦」に反対する声は、ロシア国内では依然少ないのが実情だ。

 西側諸国は第三次世界大戦につながりかねないとして、今回の戦争に直接的な軍事介入は行っていない。しかし、軍事介入に代わって欧米や日本が導入したロシアへの経済制裁は、真綿で首を締めるようにロシアを窒息させつつある。

欧米、日本による制裁とその影響

 2月24日にウクライナに全面侵略したロシア。プーチン政権は早期決着をもくろんだが、ウクライナ軍が驚異的な粘りをみせ、ロシア軍の蛮行が世界中に伝わり始めた。ロシアへの制裁に当初は及び腰だったドイツなども米国と足並みを揃え、日本も加わって、ロシアに対する強力な経済制裁が次々と導入された。

 主な内容は▽各国の中央銀行が保管するロシア中央銀行の外貨準備の凍結▽ロシアの主要銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除▽プーチン大統領や主要閣僚、プーチン氏に近いオリガルヒと呼ばれる新興財閥の資産凍結▽ロシアの航空会社の締め出し――などだ。

 さらに米国はロシアからのエネルギー輸入停止を決定。欧州もロシアへのエネルギー依存を減らす方針を表明した。民間企業も、米クレジットカード大手のビザとマスターカードがロシア業務を停止し、多くの多国籍企業がロシア事業から撤退を決めるなど、ロシア経済の封じ込めが短期間で一気に進んだ。


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