バイデンのアメリカ

2022年3月26日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 露プーチン大統領はなぜ、無謀なウクライナ侵略に踏み切ったのか――。その思想的背景として、〝知恵袋〟で極右派学者の存在がにわかに浮かび上がり、米国でも論議と関心の対象となっている。

(AP/アフロ)

 米ワシントン・ポスト紙は去る22日、今回のロシアによるウクライナ侵略にからみ、著名コラムニスト、デービッド・フォン・ドレール氏による「プーチンの思想基盤」に焦点を当てた論考を掲載した。

 ドレール氏は、プーチン大統領の「世界戦略観」に大きな影響を与えてきたとされるアレクサンドル・ドゥーギン元モスクワ大学学部長(60歳)のこれまでの著作に言及。旧ソ連邦崩壊後の、ロシアの国際的影響力および領土拡大を視野に入れたその長期戦略理論とプーチン外交安全保障政策との相互関係を論じている。

プーチン大統領就任とともにロシア政治で重用されていく

 以前から極右地政学者、戦略家として知られたドゥーギン氏には多くの著作があるが、その中でも「大ロシア復活」論を前提にした『地政学の諸基盤―ロシアの地政学的将来』(英語タイトル“The Foundations of Geopolitics: The Geopolitical Future of Russia”)が、最も注目を集めてきた。

 もともとこの著作については、2014年、プーチン大統領が軍事力投入によってウクライナ南部のクリミアを併合した直後、国際オピニオン雑誌『フォーリン・アフェアーズ』で詳しく取り上げられ、それ以来、米欧諸国でその存在が広く知られるようになった。

 ロシア問題研究家のアントン・バーバシン、ハンナ・トーバーン両氏による「プーチンの知恵袋――アレクサンドル・ドゥーギンとクリミア併合の背景となったその哲学」と題する当時の同論文では、以下のような点が指摘された:

・プーチン氏は2000年大統領就任とともに、米欧諸国の保守主義とは両極をなす国家権力に重きを置いた「ロシア新保守主義」を唱導するようになった。

・この主張を底流で支えてきたのが、「旧ソ連邦崩壊は20世紀地政学上の最大の惨事」との歴史認識を踏まえ、「偉大なるロシア復活と勢力拡大」を唱えたドゥーギン氏の著作にほかならない。

・この本は1997年に刊行され、たちまちベストセラーとなったが、それ以来、ドゥーギン氏はロシア国会議長の政治顧問として重用されるなど、右派の過激思想家として影響力を行使するに至った。

・ドゥーギン氏の戦略論は「新ユーラシアニズム」ともいうべきものであり、目指すべき将来目標として、旧ソ連邦諸国を再びロシアが併合するとともに、欧州連合(EU)諸国もロシアの〝保護領protectorate〟にするという極論から成り立っている。

・しかし、少なくともプーチン大統領が実際にクリミア併合に踏み切ったことは、ドゥーギン氏の従来からの主張を反映させたものと言える。

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