2022年8月18日(木)

バイデンのアメリカ

2022年3月21日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 激化するウクライナ戦争の早期停戦を実現させるため、ロシア軍撤退と引き換えにウクライナの「要塞中立化=fortified neutrality」という、双方が歩み寄った妥協案が米有力誌で提起され、今後、国際的にも大きな関心と論議を呼び起こすことになるとみられる。

「要塞中立化」という妥協案がロシアとウクライナの交渉に大きく影響する可能性がある(3月7日、新華社/アフロ)

 国際オピニオン雑誌「フォーリン・アフェアーズ」誌(電子版)は去る17日、トランプ前政権当時、欧州・ユーラシア担当国務次官補を務めたA・ウェス・ミッチェル氏による「ウクライナ中立化について」と題する緊急停戦案を掲載した。3年前まで米政府当局者として、ロシア、ウクライナ両国政府首脳たちとも直接接触してきた専門家による局面打開案であるだけに、極めて注目すべき内容が盛り込まれている。

 泥沼化しつつある今回のウクライナ戦争については、露プーチン大統領はこれまで、ロシア軍撤退の前提条件として、ウクライナ側が①北大西洋条約機構(NATO)に加盟せず中立の立場を維持する、②クリミアをロシア領土として認める、③ドネツク、ルハーンシク両州の独立を認める、④ウクライナを非軍事化し、ロシアにとって脅威となる兵器類を放棄する、⑤ゼレンスキー現政権の退陣、⑥ロシア語をウクライナの「第二公用語」とする――の6項目を公式に要求してきた。

 これに対し、ウクライナ政府側は、とくにNATO加盟への意欲を示すと同時に、同国「中立化」と「非軍事化」には反対の立場を表明してきた。

 両政府代表団はこれまで、ロシア軍撤退と停戦実現のための交渉を断続的に行ってきたものの、双方の主張の中でもとくにこの「中立化」「非軍事化」の2点が最大の対立点となり、これまでのところ合意成立には至っていない。

 この点、ミッチェル氏の提案は、ある程度ロシア側の主張に沿った「中立化」と同時に、ウクライナ側には今後も防衛確保のための「軍事化」を認めるという内容からなっており、双方にとっても妥協の余地があるとの判断に立って論を進めている。

 それが、ウクライナ「要塞中立化=fortified neutrality」という斬新な考え方だ。

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