2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2022年3月21日

高度の戦時態勢と強力な軍事力維持による「中立」

 その骨子は、以下のようなものだ:

1.ゼレンスキー大統領はNATO側に、追加武器援助と「ウクライナ国内飛行禁止区域」設定を要求し続ける一方で、「中立化」受諾の可能性も含む〝出口戦略〟を模索し始めている。国際法で規定される「中立化」とは国際安全保障上の同盟に加盟せず、ウクライナにとっては、将来的なNATO非加盟と外国軍国内駐留の否認を約束することになる。

2.しかしそれは、ウクライナにとっての「死刑判決」を意味するものでは決してない。「中立化」がウクライナ側にとって有利に働くかどうかの判断の重要なカギとなるのが、自国の自衛体制維持と西側の一員としての経済的政治的将来性の保証だ。過去、欧州において、強大な隣国による併合を免れるために「中立」を選択、今日、欧州共同体の一員として繁栄してきた国がいくつかある。スイス、ベルギー、オーストリア、フィンランドなどだ。

3.このうち、ウクライナにとって、最も参考になるのが、スイスとフィンランドであり、両国とも「要塞中立化」を維持している。それは、高度の戦時態勢下で強力な軍事力を維持し、侵略者に手痛い敗北を与えられる安保上の保険政策を意味している。また、ウクライナは、ロシア軍撤退を条件として、国際安全保障組織への非加盟を約束する文書に署名することによって、戦争激化で危険にさらされている原子炉15基をより安全な国際管理体制下に委ねることが可能となり、一方では、NATO側が引き続き提供する兵器と高度訓練に支えられた強力な軍隊を維持することができる。

4.しかし、「要塞中立化」が実際に機能するにはいくつかの前提条件がある。第一に、もし「中立化」したウクライナが外国軍によって侵犯された場合を想定した防衛保証取り決めを米国などの主要国との間で締結し、非常時には、西側からの大規模軍事支援、武器調達を保証する必要がある。

 第二に、ウクライナが侵略を受けた場合、ロシア相手に効果的な戦いを長期にわたり可能とするだけの広域にわたる国土保持が不可欠であり、そのためにも、停戦合意の際、領土問題についての対露譲歩は、ロシアが実効支配するクリミアほか、東南部のドネツク、ルハーンシク2州だけにとどめるべきだ。

 第三点として、西側諸国による長期的経済援助体制の確立がある。ウクライナ各地はすでに、ロシア軍侵攻と爆撃により、インフラはじめ甚大な被害を被っており、欧州連合(EU)を中核とする本格的ウクライナ復興支援を保証する必要がある。また、ウクライナにとって、いずれは経済組織としてのEUへの加入も考慮の対象となる。

見え始めている両国の譲歩姿勢

 ここで、上記のような緊急提案との関連でとくに注目されるのは、機を一にしてロシア、ウクライナ双方が、提案内容に沿うかたちで、譲歩の姿勢を見せ始めている点だ。


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