2022年10月3日(月)

バイデンのアメリカ

2022年3月7日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 ロシア軍による軍事攻勢激化の中、ウクライナの首都キエフ陥落に備えて、ゼレンスキー大統領ら政府首脳を安全に国外に脱出させ、直ちに「亡命政府」樹立を内外に宣言する構想が急遽、米政府および連邦議会内部で浮上してきた。

ウクライナ国内に残りビデオ演説をするゼレンスキー大統領。欧米諸国からは「亡命政府」案が浮上している(ロイター/アフロ)

 ウクライナに侵攻したロシア軍部隊は、東部および南部のいくつかの地方都市をすでに攻略する一方、10万人規模の主力部隊は、今のところ、キエフ西北約20キロの国境付近にとどまり、今後の本格進軍に備える態勢をとっている。

 しかし、米国防総省当局者の間では、ロシア軍はじりじりとキエフ包囲網を狭めつつあり、首都陥落は時間の問題となってきた、との悲観的見方が広がり始めている。

 こうした風雲急を告げる事態を受け、政府部内および議会有力議員の間で急遽、籠城状態にあるゼレンスキー大統領ら政府首脳の身の安全を確保の上、国外に誘導し、隣国ポーランドかルーマニアで「亡命政府」を直ちに樹立する案が、真剣に検討され始めた。

米主要メディアが一斉に報道

 ホワイトハウスや国務省は、極めて微妙な段階にあるだけに、今のところ、こうした動きについて固く口を閉ざしている。

 しかし、米主要メディアは5日、「亡命政府」計画について一斉に報じ始めている。

 同日付のワシントン・ポスト紙によると、現時点で亡命問題を議論すること自体、「ロシア軍勝利」を認めることになるため、政府当局者たちは、その計画の存在すら公式には認めていないが、実際には、今後の米欧同盟諸国側対応の「第一ステップ」として、対ロシア占領軍相手のゲリラ作戦を展開するための国外「亡命政府」を支援していく具体案が協議の俎上に上がってきた。

 米政府関係者の一人は「匿名」を条件に、同紙記者に対し、「われわれは、ゼレンスキー大統領がポーランド内に亡命政府を樹立する案含め、あらゆる非常時対策案を検討中だ」と語り、キエフ陥落後に備えつつあることを認めている。

 検討中といわれる「亡命政権」構想の根底には、ゼレンスキー大統領を頂点とする政権指導部が国外に出たとしても、国内各都市、町村部には、ロシア軍相手に戦闘意欲の旺盛な何百万人にもおよぶ青年、予備兵が居残り、長期ゲリラ戦が展開されるとの打算がある。そのためには、米欧同盟諸国側も、今後、長期にわたり、反露ゲリラ・テコ入れのための「ハープーン」「スティンガー・ミサイル」などの各種兵器、弾薬、兵站物資の継続的投入が余儀なくされてくることは言うまでもない。

 この点に関連して、「西側情報機関高官」は、「先の国連緊急総会で、ロシア軍即時撤退を要求する対露非難決議に141カ国が賛成したことにも示されている通り、世界各国からのウクライナ支援は無期限に続けられる」との見通しを述べるとともに、「第二次世界大戦当時から、ウクライナ人の勇猛果敢なレジスタンスぶりは有名であり、ロシア軍相手に今後、何カ月も何年も戦い続けるだろう」と付け加えた。

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