2024年4月15日(月)

バイデンのアメリカ

2022年3月7日

大統領権限継承や新たな潜伏先も検討

 当面、最大の問題は、依然、キエフ市内の某所に居残り、国軍兵士たちに徹底抗戦を呼びかけ続けているゼレンスキー大統領が、国外脱出案を受け入れるかどうかだ。

 同大統領はつい最近まで、脱出を拒否し続け、メディアを通じ「自分が必要なのは、弾薬であり、(脱出のための)足ではない(I need ammunition, not a ride!)」と訴え、国外でも賞賛と同情が集まった。

 米政府高官はこの点について、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「われわれはこれまでのところ、彼に国外脱出案を示していないし、退去も進めていない」と語っている。

 その一方で、米欧側当局者たちは、もし、ゼレンスキー大統領が国内にとどまり続ける間に、ロシア軍に身柄拘束、あるいは殺害された場合も想定し、法的に正当性のある大統領権限継承問題についても、すでに協議を開始したといわれる。

 現行のウクライナ憲法規定によれば、大統領に代わる第1位継承者は、国会議長となっている。ラスラン・ステファンチュク現国会議長は、ゼレンスキー大統領の首席補佐官もしたことのある〝親西欧派〟政治家としても知られており、つい最近も、ゼレンスキー大統領と隣り合わせで戦争対策会合に臨んでいたことが確認されている。このため、仮にロシア傀儡政権が国内に樹立されたとしても、彼がゼリンスキー氏に代わる後継者として、国内または国外から徹底抗戦を指揮することが期待されている。

 さらに、西側政府当局者は、ゼレンスキー大統領をはじめとする側近たちに、身の安全確保のため、潜伏場所1カ所ではなく、何カ所かに分散するよう、説得しているとも伝えられる。

 同紙によると、関係筋は「われわれの主たる関心は、プーチン体制が仮にウクライナ占領後、首都キエフに傀儡政権樹立を宣言したとしても、なんらかの形態の『独立ウクライナ政府』が存在し続けることである。この点で、西側諸国が『独立したウクライナ国家指導者』を認知することによって、ロシア傀儡政権は正当性を失うことになる」と説明している。

「亡命政権」が実現すれば、長期戦は必至

 もし、こうした米欧同盟諸国による「亡命政権」構想が実現し、ゲリラ化したウクライナ人武装勢力による徹底抗戦へと発展していった場合、ロシア駐留軍としては長期にわたり苦戦を強いられる公算が大きい。それは、1979年12月、旧ソ連軍によるアフガン侵攻と駐留を想起させる。

 当初、3万人規模の地上部隊が首都カブールに進軍、またたくまに占領した後、親ソ派の野党指導者を首領とする傀儡政権を樹立した。しかし、ムジャヒディン・ゲリラ勢力の抵抗と地下活動は日増しに激化し、米国からの大量の兵器、軍事物資支援を得て反ソ戦争はますます激化していった。

 結局、数十万人におよぶ後続部隊をつぎつぎに投入したものの、ソ連軍の士気は低下する一方、モスクワ政府の戦費負担がソ連国民の生活を圧迫し始めるに及んで、最後は、アフガン国のソ連併合という当初の目的も果たせないまま、ついに10年後の89年に撤退を余儀なくされた。

 しかも、ウクライナの場合、人口規模、経済力、戦闘能力、国民の士気のすべての面において、アフガンの数十倍の潜在力を保持しているだけに、長期戦となった場合、ロシア側の戦時負担はけた違いに膨れ上がることは確実であり、プーチン政権は想定以上の苦境に直面することになる。

 また、アフガン占領時とは異なり、ウクライナは欧州大陸の一部であり、今回は米国のみならず、英仏独伊など欧州主要国がウクライナ国民のレジスタンス運動を軍事、経済両面で強力に支援していくことは確実だ。


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