トルコはロシアがウクライナに侵攻したことで微妙な立場に置かれることとなった。両国ともにビジネス上、重要な存在であるからである。
トルコは現在、自国製ドローンをウクライナに売却しているが、ガス.食料品購入や防衛調達の面では大きくロシアに依存している。トルコは天然ガスの約33%、小麦の約66%をロシアから輸入している。2021年にトルコを訪れた外国人観光客の国別内訳では、ロシアが1位、ウクライナが3位で、両国合計で全体の3割近くを占めている。
困難な立場に置かれたトルコのエルドアン大統領は2月24日、国家安全保障会議の招集後、「トルコは領土を守るためのウクライナの闘争を支持する」とツイートし、ロシアの軍事作戦は容認できないとの考えを強調した。しかし、このツイートで「侵攻」という言葉を使用せず、ロシア側への一定の配慮も示した。両国との関係を損なうことなく、何とか危機を乗り切りたいとの思いが窺える。
そのトルコは、危機時に重要な航路となるボスポラス海峡とダーダネルス海峡を管理する権限を、1936年に締結された「モントルー条約」により与えられており、黒海に接していない国家の軍艦の通行を制限する独占的権利を持っている。しかも、戦時中や侵略の脅威がある場合、全ての外国軍艦の海峡通過を禁止できる立場にもある。
ただし、同条約は、ロシアを含む黒海沿岸国には例外的な特権も認めている。実際、トルコ外相は2月27日、地元テレビのインタビューで、国際条約に基づいて、ロシア軍の艦艇が黒海と地中海を結ぶトルコの海峡を通過するのを禁止し、黒海入りを制限する可能性を示唆しつつも、例外規定のために全面禁止は困難との認識を示している。
エルドアン大統領が翌28日になって「モントルー条約」を適用する考えを示唆したのも、ロシアが同条約で認められた例外的特権を持っていることから一方的な圧力はかけられない点を浮き彫りにすることで、ロシア対応が弱腰とのトルコ批判をかわす狙いがあるためとみられている。
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