2024年12月18日(水)

世界の記述

2022年1月23日

yalcinsonat1 / iStock / Getty Images Plus

 トルコのエネルギー当局は2022年1月1日、同日から電気料金について、需要の低い家庭向けを約50%、需要の高い企業向けを最大125%、それぞれ引き上げたと発表した。また、国営石油・ガス輸送会社ボタシュも同日から、天然ガス価格について家庭向けは25%、産業向けは50%、発電産業向けは15%、それぞれ引き上げたことを明らかにした。

 さらに、トルコ最大の都市イスタンブールの商業会議所(ITO)によれば、同国人口8400万人のうち5分の1が暮らす同市では、21年12月の小売価格が前月比9.65%、前年比34.18%、卸売り価格が前月比11.96%、前年比47.10%も上昇している。

 トルコの通貨リラの対米ドル・レートは、中央銀行が一連の政策金利の引き下げを行った昨年9月以降、44%も下落している。こうしたリラの価値急落によって昨年11月に21%超まで上昇したインフレ率は、同年12月には30%超えとなると見られており、その後も上昇し続けると予測されている。

 トルコが高インフレと対米ドル安にもかかわらず金利引き下げを続けているのは、それにより景気が良くなるとのエルドアン大統領の特異な考え方によるものである。

 トルコ中央銀行は昨年12月16日、主要政策金利の1週間物レポ金利を1%引き下げ年率14%とすることを決定した。これによりトルコの利下げは、昨年9月以降、4カ月連続となった。ただし、この決定後、リラの対米ドル・レートは最大5.7%下落している。

 そのためエルドアン大統領は昨年12月20日になって、リラ預金について、外貨換算した場合の為替差損が利息を上回って拡大すれば、損失相当分を政府が肩代わりするとの「預金保護措置」を発表した。

 これにより一時は過去最安値の1㌦=18.40㍒まで下落したリラの対米ドル・レートが回復したことから、同大統領は2日後の12月22日、与党議員に対して、自身の進める低金利政策の妥当性を改めて主張することとなった。ちなみに、リラの対米ドル・レートは、1月18日時点では13㍒台の中頃となっている。

 ただし、リラの反発には、中央銀行主導の為替介入の影響が大きいとの見方も少なくない。それだけに、仮にリラ安が再び加速する事態となれば、肩代わりをしている国家財政の負担がますます高まることになるので、「預金保護措置」が長期にわたって機能し得るのかとの懸念の声も出始めている。

 はたして、エルドアン大統領が自身の考え通りに通貨防衛に成功するのか否か。トルコの経済・金融情勢を今少し見続ける必要がありそうだ。

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人類×テックの未来  テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ
part1​   未来を拓くテクノロジー  
1-1 メタバースの登場は必然だった
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  column 1   次なる技術を作るのはGAFAではない ケヴィン・ケリー(『WIRED』誌創刊編集長)
1-2 脱・中央制御型 〝群れ〟をつくるロボット 編集部
1-3 「限界」を超えよう IOWNでつくる未来の世界 編集部
  column 2   未来を見定めるための「SFプロトタイピング」  ブライアン・デイビッド・ジョンソン(フューチャリスト) 
part2   キラリと光る日本の技  
2-1 日本の文化を未来につなぐ 人のチカラと技術のチカラ 堀川晃菜(サイエンスライター/科学コミュニケーター)
2-2 日本発の先端技術 バケツ1杯の水から棲む魚が分かる! 詫摩雅子(科学ライター)
2-3 魚の養殖×ゲノム編集の可能性 食料問題解決を目指す 松永和紀(科学ジャーナリスト)
part3   コミュニケーションが生み出す力  
天才たちの雑談
松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科 教授)
加藤真平(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授)
瀧口友里奈(経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード・メンバー)
合田圭介(東京大学大学院理学系研究科 教授)
暦本純一(東京大学大学院情報学環 教授)
  column 3   新規ビジネスの創出にも直結 SF思考の差が国力の差になる  
宮本道人(科学文化作家/応用文学者)
part4   宇宙からの視座  
毛利衛氏 未来を語る──テクノロジーの活用と人類の繁栄 毛利 衛(宇宙飛行士)

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テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ
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メタバース、自律型ロボット─。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。


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