Wedge REPORT

2021年9月15日

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今井宏平 (いまい・こうへい)

日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所研究員

2004年中央大学法学部卒業。11年中東工科大学国際関係学部博士課程修了。日本学術振興会特別研究員PDを経て、16年から現職。専門は、現代トルコ外交・国際関係論。主な著作に『トルコ現代史』(中央公論新社)など。
 

 アフガニスタン情勢が動乱する中、存在感を見せているのがトルコである。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコは2001年からアフガニスタンでの活動に積極的に参加してきた。トルコは主に、首都カブール近郊への部隊の派兵、地方復興支援チーム(PRT)における活動、アフガニスタンの治安組織の訓練を行なってきた。また、イスラム教徒が多数を占め、親イスラム政党の公正発展党が率いるトルコはアフガニスタンの人々からも一目置かれてきた。

(DVIDS)

 一方でNATOにおけるトルコの位置づけは近年、微妙なものとなっていた。その最大の原因は、トルコがNATO加盟国でありながらロシアからS-400防空ミサイルシステムを購入したことであった。20年10月に黒海周辺でS-400の試射が実施されたことを受け、同年12月に米国のトランプ前政権はトルコに対し、「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」、いわゆるロシア制裁法を発動した。

 こうした中、21年4月半ばにジョー・バイデン政権がアフガニスタンからの米軍の撤退を発表したことは、トルコにとって失墜した信用を取り戻すための絶好のチャンスと捉えられた。

アフガンで一目置かれていたトルコ

 米国とアフガニスタンは20年2月に米国がアフガニスタンから撤退することに合意した。この合意は米軍だけでなく、NATO軍の撤退が明記されていた。この合意はカタールの仲介を通して実現したものであった。そして21年4月13日にバイデン大統領は、同年9月11日までに米軍がアフガニスタンから完全に撤退することを宣言した。米軍に続き他のNATO軍、例えば米軍に次いで多い1300人を派兵しているドイツや5番目に多い750人を派兵しているイギリスもアフガニスタンからの撤退を決定した(表1参照)。

(出所)NATO資料よりウェッジ作成

 一方で米国はアフガニスタンから撤退することで同国の治安が悪化することを懸念していた。そこで米国が期待したのがトルコであった。トルコは国際治安支援部隊(ISAF)および「確固たる支援任務」(Resolute Support Mission)というNATOのアフガニスタンでの活動に積極的に関与してきた。

 表1のように、トルコの派兵人数は21年2月時点で600人と全体で7番目に多い人数をアフガニスタンに派兵していた。また、ムスリムが多数を占め(国民の約98%)、スルタン・カリフ制を敷いていたオスマン帝国の歴史を有していることでタリバンを含むアフガニスタンの多くの政治勢力からも一目置かれていた。

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