シリアとその周辺国では、内戦後を見据えたような動きが顕在化している。例えば、エジプト外相は2021年9月下旬、ニューヨークでの国連総会を利用する形で、シリア外相と外相同士として10年ぶりの会談を行った。また10月には、ヨルダンのアブドゥラ国王が、シリアのバシャール・アサド大統領とやはり過去10年で初のやり取りを行っている。
加えて、国際刑事警察機構(ICPO、通称インターポール)は10月上旬、声明を発表し、シリアを情報交換網に復帰させ、12年に課したアサド政権に対する制限を撤廃したことを明らかにしている。
さらに9月中旬には、燃料不足が続くレバノンへ、同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラの手配による、シリア経由でのイラン産石油のレバノン搬入が実現し、この動きは今も続いている。
このほかシリア、ヨルダン、レバノンのエネルギー相が10月28日、電力危機に直面するレバノンを救おうとベイルートで会談し、その後の共同記者会見で同国に電力を供給するとの最終合意を発表している。
こうした中、シリアの政府系新聞アルワタン紙は10月8日、アサド大統領の叔父リファト・アサド元副大統領(84歳)がフランスでの服役を逃れ、36年間に及ぶ亡命生活から帰国したと報じた。
パリの控訴審はそのほぼ1カ月前、同氏に対して、シリアでの公的資金の不正流用、横領資金の資金洗浄、フランスで莫大な不動産資産を構築し不正な収益を得ていたといった容疑で、懲役4年の一審判決を言い渡していた。
亡命以前、副大統領を務めていたリファト氏は、同氏の兄で現大統領の実父ハーフィズ・アサド大統領に対するクーデターに失敗し、1984年、フランスに亡命していた経緯がある。
アルワタン紙は、アサド現大統領が叔父リファト氏のフランスでの服役を回避すべく、政治活動に関わらないことを条件に過去の言動を横に置きシリア復帰を許した、と解説している。つまり、危険な考えを持っていた昔の政敵を国内に迎え入れても内政が揺らぐことは決してないとの自信を、アサド大統領が持っているということである。
なお、政敵米国のブリンケン国務長官は10月13日の記者会見で、シリアにおける政治的問題の解決がみられない限り、アサド大統領との関係正常化や対シリア制裁解除などは行わないと発言し、アサド大統領が事実上の復権を果たしつつあることを暗に認めている。シリア情勢が総じて「アラブの春」以前の状態に向かいつつあることを示しているといえそうだ。
■日常から国家まで 今日はあなたが狙われる
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InterviEw1 コロナ感染と相似形 生活インフラを脅かすIoT攻撃
吉岡克成(横浜国立大学大学院環境情報研究院・先端科学高等研究院准教授)
coLumn1 企業を守る手段の一つ リスクに備える「サイバー保険」 編集部
Part2 主戦場となるサイバー空間 〝専守防衛〟では日本を守れない
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Part3 モサド元高官からの警告 「脅威インテリジェンス」を持て
ハイム・トメル(元モサド・インテリジェンス部門トップ)
Part4 狙われる海底ケーブル 中国サイバー部隊はこう攻撃する
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Part5 〝国家〟に狙われる日本企業 経営層の意識変革は待ったなし
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