冬を間近に控えたこの時期にベラルーシのルカシェンコ大統領は、数千人のイラク、シリア、イエメンなど中東からの移民をポーランドに越境させるべく、国境のクズニカ検問所付近に集結させている。
この夏頃からポーランド、リトアニア、ラトビアに越境する移民の動きが見られたが、11月上旬に至り、これまでにない規模の集団がミンスクからポーランド国境に向かっていることが判明し、一気に緊迫の度を増すことになった。国境地帯には3000から4000人の移民が滞留している模様であるが、彼等は背後をベラルーシの警備兵、前面は有刺鉄線とポーランドの兵に阻まれて行き場を失っている。この他にも、ベラルーシ国内には1万~2万人が滞留しているとされている。
11月20日頃になって、国境沿いで野営していた難民ら約2000人の多くが保護されたと報じられ、事態は一時的に緩和しているようにも見える。しかし、依然として予断を許さない状態であると思われる。
今回の事態にポーランドは欧州連合(EU)の助力を断り、独力で対処し、1人の移民の入国も認めない構えのようである。ジャーナリスト、援助機関要員、EU当局者の国境地帯への立ち入りを認めていないのは、対応振りの一つ一つを国際的に吟味させないためであろう。
2015年の難民危機の際には難民受け入れを拒否してEUとの間で軋轢を生じた経緯があるので、EUの助力を得ることには抵抗もあろう――フェンスの建設に英国の工兵隊の支援を得るらしいが、EU非加盟国の支援は受け易いのであろう。むしろ、法の支配の問題でEUと対立する状況にあるので、ポーランドの存在価値をEUに知らしめたいとの思惑もあるであろう。
ルカシェンコの狙いがベラルーシの反民主的あるいは人権抑圧的な行動に制裁を発動したEUに報復し、反体制派を匿うポーランドとリトアニアにも報復するとともに、難民・移民問題という敏感な問題につけ込むことによってEUの不安定化を試みることにあることは明らかである。移民を武器として使うこの計略を彼は予告したこともある。
去る6月、欧州諸国はベラルーシに不法移民の抑圧における協力を期待しているが、EUは我々の経済を破壊しようとしていると彼は述べた。8月にはEUの制裁が逆効果となることは国境地帯で生起している現実が示していると述べたこともある。さらに、ルカシェンコは11月19日にBBCのインタビューに応じ、この中で、ベラルーシ当局が移民の越境を助けたことを示唆している。