ルカシェンコ政権が密航業者を使って中東の移民を集めたことも色々な証言で証明されている。3000ないし4000ドルを払ってベラルーシのビザとイラクから(トルコやアラブ首長国連邦経由の)ミンスクまでの航空券を手に入れたという証言が報じられている。
ルカシェンコ自身の立場も危ういものに
フィナンシャル・タイムズ紙の11月10日付け社説‘Belarus is fomenting a tragedy on its border’は、人命の保護を原則とし国境地帯での惨事を避けるべきことを説いているが、以上に鑑みれば、今回の危機は15年の難民危機とは基本的に性格を異にしており、そうはなり得ないであろう。
危機は暫く続くであろうが、ここはルカシェンコの計略を粉砕するしかない。騙されて連れて来られた移民は悲惨であるが、その責任はルカシェンコにあることが明確にされなければならない。酷に聞こえるかもしれないが、騙された移民自身にも責任があると言うべきであろう。
他方、ルカシェンコは自身の立場を危ういものにしているように思われる。ベラルーシには国境地帯以外にも多数の移民が存在するというが、今後更に増えるかも知れない。ベラルーシは圧倒的に白人の均質的な国であり、多元的な社会の経験を欠いている。移民が滞留することになれば、移民に対する恐怖と敵意がルカシェンコに対する不満に転化する怖れがないとは言えないであろう。
付言すれば、ロシアの動向にも注意を払う必要がある。ロシアがルカシェンコの後ろ盾となっていることに疑問はないが、ロシアが危機を作り出した訳ではない。しかし、西側がこの危機に注意を奪われている間に、ロシアが好機と見ればウクライナで更なる侵略的行動に出る危険性(このところロシアはウクライナ国境地域で兵力を増強する動きをしている)に留意を要しよう。