教養としての中東情勢

2021年11月24日

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 ベラルーシ西部のポーランド国境に欧州連合(EU)流入を図る多数の難民が集結している問題は〝欧州最後の独裁者〟、ベラルーシのルカシェンコ大統領が仕組んだものであることが濃厚となっている。しかし、EUに揺さぶりを掛けるつもりが、逆に追加制裁を受けるなど思惑は狂い、墓穴を掘った格好。今後の焦点は難民危機の「黒幕」とされるロシアのプーチン大統領の動向だ。

(ロイター/アフロ)

国境で何が起きていたのか

 最初の異変はバルト三国のリトアニアでだった。ベラルーシ経由の不法入国者が昨年は100人弱だったが、今年夏ごろに急増、3000人を上回った。その後、難民の群れはポーランド国境に向かうようになった。11月初めの段階で、国境周辺の難民は数千人に膨れ上がった。難民の大勢はイラクのクルド人やシリア人ら中東諸国の出身者で、最終的にドイツ入りを目指す人々だった。

 難民たちは、流入を阻止するためポーランドが設置した鉄条網を切断したり、鉄条網の下の地面を掘ったりたりして越境しようとした。ポーランド側は国境警備隊2万人を出動させ、放水などで流入を阻止、これに難民が投石するなど混乱が広がった。厳寒の中、飢えや凍死でこれまでに子どもら12人が犠牲になったと報じられている。

 ルカシェンコ氏は「難民危機を作り出している」との国際的な批判が強まる中、ポーランドや同国を支援するEUを激しく非難し、EUが制裁を強化すれば「欧州向けのロシアからの天然ガスパイプラインを止める」とまで恫喝した。しかし、一方で同氏は事態の収束に動き、ドイツのメルケル首相と会談。会談後「問題は解決した」として、一部の難民を国境付近から強制退去させた。

 この退去では、渋る難民に犬をけしかけるなど非人道的な行為もあったが、難民の一部であるイラク人430人が18日、母国に送還された。しかし、現地からの報道などによると、なお難民数千人が残っているとされ、危機は収拾していない。

意図的に送り込まれた難民

 今回の問題で指摘しておかなければならないのは元々、難民の集結はルカシェンコ氏によって意図的に作り上げられたものではないか、という点だ。欧米紙などによると、例えばイラク北部のクルド人たちはベラルーシの国営旅行会社の代理人に観光ビザと航空券代、宿泊費などを支払い、合法的にベラルーシに入国している。組織的にベラルーシ側が募集したことは明白だ。

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