イスラム主義組織タリバンが制圧したアフガニスタンからの難民が問題となっている。エルドアン・トルコ大統領は9月21日、国連総会における約30分の演説で、同国が既に400万人近いシリア難民を抱えており、さらなる受け入れは出来ないので全関係諸国で責任を分かち合わねばならないと述べ、難民受け入れに厳しい姿勢を示した。
同時に、エルドアン大統領は、トルコはアフガンに対して友愛を持って対応し続けることは約束するとした上で、国際社会もアフガンへの支援と連帯感を示すよう要請した。
エルドアン大統領がアフガン難民問題で強硬な姿勢を見せた背景には、シリア難民のほか数十万人と見られるアフガン難民をそれまでに受け入れていることへの国民不満の高まりがある。実際、国民の不満を示すように、今年8月末にはトルコ初とみられる反難民政党「勝利党」が誕生している。
トルコ政府は、新たなアフガン情勢の不安定化を受けて200万人超の同国難民がパキスタンとイランに流入してきたこともあり、従来から進めていた500キロメートル超もあるイランとの国境での、高さ約3メートルの防御壁の建設を急いでいる。
さらに、トルコへの難民の流入を警戒しているのが欧州諸国である。以前から難民の多くがトルコを経由して欧州を目指してきたからだ。例えば、ギリシャは8月20日、タリバン政権の成立により欧州を目指すアフガン難民が増えると予想されるとして、同国がトルコ国境沿いの40キロメートルの壁の建設を既に完了させたほか、国境地帯に新監視システムも設置されたことを明らかにした。
8月下旬以降には、ドイツ、オランダの外相や欧州連合(EU)高官らが相次いで「トルコ詣で」を行った。
このほか、オーストリアのカロリン・エズスタドラー欧州連合(EU)相は9月16日、トルコが自国の目的をかなえるために、移民の動きを使って圧力をかけているがEUは屈しないと述べてトルコを批判し、トルコとEUの間で再び難民問題が起きる可能性を示唆した。
こうした中、カナダと英国については、人数的には少ないながら、それぞれ2万人のアフガン難民を引き受け入れることを表明している。だが、EUは受け入れ目標に何ら言及することなく、アフガン難民が近隣諸国で落ち着くことを目指して、これら諸国への財政支援を申し出るに留めている。
国連は、2021年だけで50万人超ものアフガン難民が発生すると推計している。バイデン米政権は、9.5万人のアフガン難民の再定着を支援するためとして、議会に資金支援の承認を要請するなど、アフガン情勢への対応は次のステージへ進んでいる。トルコに受け入れ拒否されたアフガン難民の行方が改めて注目される。