9月8日、タリバンが暫定政権を発足させたと発表したが、アフガンが今後どうなっていくのか、まだ見通しは立てがたい。タリバンをアフガンの正統政府として承認するのは時期尚早だろう。暫定政権の今後の行方は、まだ明確ではない。
タリバンは、人権や女性の社会参加を求める国際社会をあざ笑うかのように、国際テロリストに指定され国連安保理の制裁対象になっているような人物を含む面々で暫定政権を固めた。今後、アフガンの諸民族を包摂した政府を目指す動きが出てくるのか、あるいはタリバンが権力を独占したままでいるつもりなのか、よくわからない。
国家承認のためには、領土、住民、事実上の政府による実効支配の3要件が必要とされ、国際法を守る意思と能力が要求されるが、タリバンが全土を実効的に支配しているとは必ずしも言えないと思われる。他方、タリバンと実務的な関係をもち、出国したい人々で取り残された人の出国問題や今後出てくるおそれがある人道危機に対して国際援助機関が危機対応をなしうるようにしておくことは大切である。
エコノミスト誌9月4日号の社説‘America should engage with the Taliban, very cautiously’は、「米国は非常に用心深く、タリバンと関与すべきである。目的は中国やイランと競争することではなく、普通のアフガン人を助けることにすべきである」と説く。
社説は、次の二つの極論があり、いずれも誤りであると指摘する。一つは、「タリバンはあまりに不快、暴力的、抑圧的で、信用できないので、米国はできるだけ関係を持たないようにすべきである」という考えである。もう一つは、「もし米国がアフガンで何らかの影響力を維持したいのであれば、中国、イラン、ロシアがアフガンを得意先とする前に、アフガンと関与し始めるのが良い」とする考えである。
これに対し、社説は、「最も緊急の利益はアフガニスタンが再びテロの温床になることを阻止することである」として、「タリバンと何らかの取引をしないで、これらの目標のいずれかを達成することは不可能である」と述べている。
この社説の主張は妥当なものであると言える。ただ、アフガンがテロの温床に再びなることを防ぐことが社説では重要視されているが、オサマ・ビン・ラーデンが主張していた対米ジハードはいまや支持者も少なく、運動としては成り立たなくなっているのではないか。