世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年9月13日

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 米国防省は、現地時間8月30日夜、アフガニスタンから最後の米軍用機(82空挺師団司令官と米代理大使同乗)が撤退したと発表した。ISISの脅威のなか米軍は厳戒態勢を敷くとともに、タリバンはカブール空港周辺の治安警護で協力したという。欧州等は31日の撤退期限延長を求めたが、結局バイデンはタリバンの強い要求をのんだ形となった。

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 米軍の撤退完了までの二週間の出来事は、アフガニスタンの今後の尋常ならざる事態を予見させる。8月15日、カブール政権は予測に反し突然崩壊する。これで米国はアフガニスタンでのパートナーを失う。その後、自国民や現地スタッフの国外脱出に努めるも、カブール空港へのアクセスは段々難しく危険になる。

 8月26日、ISIS-K(IS系の「イスラム国ホラサン州」)がカブール空港外で自爆テロを行い米軍人等多くの死者、負傷者が出た。アフガニスタン内の各勢力間の複雑な敵対関係が露呈した。

 翌8月27日、米国はナンガハルン州のISIS幹部にドローン攻撃で報復。米国は、更なる自爆攻撃を警告するなか8月29日、カブール市内で弾薬を積んだ車両を空から攻撃。8月30日、米軍の撤退完了。しかし、新政権は出来ておらず、空港の稼働継続も覚束なく、米軍撤退後は正に各勢力が入り乱れ、内乱状態に向かうのではないかと懸念される。

 タリバンは信用できるのかどうか疑問がある。20数年前のタリバン統治の悪夢は未だ多くの人の脳裏に焼き付いている。「変わったタリバン」というイメージ刷新は、実際の行動を見るまでは信じることは難しい。既にタリバン関係者は、それは民主制ではないと明言している。米軍撤退によりタリバンも束の間のパートナーを失う。

 ともかくタリバンは、政権移行交渉をしているカブール政権派のアブドラ、カルザイ等と早く政権を作る必要がある。他方ISISとの関係は一層厳しく、暴力的になるだろう。今や大量の武器や機器がカブール政府軍からタリバン管轄下に入って来ている。タリバンがアルカイダを引き続き抑えられるか、あるいは抑える意思を持つかどうかも分からない。タリバンと交渉を欲している北部の軍閥指導者の動きも注目される。治安の他、国民経済や生活が崩壊し、人道悲劇や惨禍が起きないか、懸念される。

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