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2021年9月9日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 ポスト菅の自民党総裁にはだれが、どういう基準で選ばれるのか。

 かつてない乱戦の様相を帯びている。そんな中で、相も変わらず、どの派閥が誰を支持するか――だけがかまびすしくとりざたされている。

 日本が一流国にとどまることができるかの分岐点で、今回の総裁選は行われる。

(AP/アフロ)

 遅れてやってきた新型コロナウイルス感染症による医療崩壊、政局混乱に対するアメリカの懸念、アフガニスタンでの救出作戦の失敗、五輪直前のスタッフ更迭にみる人権意識の低さ――。

 一流国の地位を喪失させるような問題が相次ぐなかで、新しい総理・総裁はコロナ後を見据え、緊急の問題にどう取り組み、そして、〝二流国〟への転落寸前の日本をどう立て直していくのか。コロナ後の世界で日本がどう生きるかの大きな青写真を示さなければならない。

 〝永田町の論理〟、多数派工作の成功だけで選ばれた理念なき総理大臣では、「衰退した旧大国の指導者」になり下がってしまう。

 斬新、大胆な発想でまったく新しい人材を選ぶという発想が政治家にも、国民にも浮かんでこないのは残念というほかはない。

米、「QUADへの影響不可避」

 これほど「内外多事多難」な中で行われる自民党総裁選はかつてなかった。

 菅義偉政権がわずか1年で終焉をみたことで、不安に襲われているのは、いうまでもなくアメリカだ。短命政権が出ては消え、消えては出る、かつての政局不安定の時代に逆戻りするのではいか――というのが多くに共通した見方だ。

 ブッシュ政権などで対日政策に携わった知日派の元米政府高官は、中国の台頭に対抗する日米豪印の4カ国戦略対話(QUAD)の首脳対面会合への影響がでるとみる。

 4首脳会合は今月下旬にワシントンで開かれ、退陣を控えた菅首相も出席の予定と伝えられるが、元高官は「日本の政局混迷が続けば、米国のインド・パシフィック構想構想そのものに障害が出る。日本は各国の信頼も失うだろう」と強く懸念する。

 異常ともいわれたトランプ政権が去り、同盟国重視のバイデン政権が登場。4月に菅首相を最初のゲストとしてホワイトハウスに招き、対中問題で意見交換した半年もたたないうちに首相が退陣するとあっては、米国の失望は大きい。 

 1990年代、自民党の野党転落、自社連立政権の登場、相次いだ自民党短命政権など日本の政局が混乱していた当時、東京勤務の経験もある国務省の〝ジャパン・ハンド〟が語ったことがある。「アメリカは日本と、政治・安全保障、経済など広い範囲でじっくり議論を戦わせ、協調を維持していける強い同盟関係を望んでいる。しかし、その期待は裏切られ続けてきた」と。

 菅政権の退陣表明後、筆者は再び、この日本専門家に話を聞いてみる機会があった。

 「そう、あのころと全く同じ状況に戻るのかもしれないね」と暗い表情を隠さなかった。

アフガン失敗は政局混乱も一因?

 菅退陣という政局混乱のさなかに、アフガニスタンでの救援活動が失敗したのも象徴的だった。

 事の次第は、すでに詳しく報じられているので、繰り返すことは避けるが、自衛隊輸送機を3機も現地派遣しておきながら、救出したのは日本人1人とアフガニスタン14人。助けを待つ500人もの日本大使館現地職員、協力者は置き去りにされた。

 カブール空港へのテロ攻撃という不測の事態はあったものの、自国出身者に加え、400人ものアフガン二スタン人を無事救出した隣国、韓国との違いはどうだろう。

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