2022年12月8日(木)

Wedge REPORT

2021年9月9日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 自衛隊機を出して救出作戦を行うというなら、岸信夫防衛相みずから乗り込み、陣頭指揮に当たるくらい必要だったろうが、日本はそれもしなかった。 

 防衛相が自衛隊に撤収命令を出した8月31日は、総裁選を控えた菅首相が、二階俊博幹事長らの更迭を決意したと伝えられた日。総裁選をめぐる動きが自衛隊の救出作戦に影響を与えたといわれてもやむをえまい。

政治、経済、人権でももはや二流?

 東京オリンピック直前に、開閉会式のショーディレクターが解任された問題も、日本のイメージを大きく損なった。過去に、ユダヤ人虐殺を揶揄するような発言をしていたことが問題視された。

 ホロコーストの告発を続けている米国のユダヤ人権団体が非難声明を発表し、海外メディアも「日本の評判を落とす大問題」などと酷評、辛辣な論評を加えた。

 大会組織委員長の森喜朗元首相が2月に、女性蔑視発言で辞任したことを想起させ、海外の冷淡な受け止めを増幅させたのは想像に難くない。

 日本にとって深刻な問題はまだまだある。

 4-6月の国内総生産(GDP)の前期比年率がわずか1.9%増(改定値)にとどまり、回復傾向にあるアメリカ(6・6%)、英国(20・7%)、中国(7・9%)の増加率に大きく水をあけられた。

 GDP世界第3位の地位を明け渡す日も遠くないかもしれない。

 8月30日には、テロリストや暴力団に渡る資金洗浄(マネーロンダリング)への各国の対策を評価している国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が日本について、「大手金融機関以外は不十分」として〝不合格〟判定を出した。

 そしてロシア。菅首相が退陣表明した9月3日、プーチン大統領がウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで演説、日本との平和条約交渉に意欲を示しながら、不法占拠している北方領土に外資誘致の特区を設置する不当な方針を表明した。

 同フォーラムにはこれまで安倍晋三前首相が毎年出席していたが、ことし、菅首相は招待されなかった。

 7月26日には、開催中の東京五輪に水をさすように、ミシュスチン首相が日本固有の領土である択捉島を訪問している。

 韓国との関係では、先方の国防予算が2022年に日本と並び、23年には超えるという報道(8月31日、日本経済新聞)もあった。

 よくもこれだけのマイナス材料が総裁選の時期に集中したものだと驚くが、このタイミングにとどまらず、日々、こうした危機が続いているとみるべきだろう。

 これはまさに日本の衰退を如実に示す証左というべきではないか。

 経済大国の地位を失いかけている日本は、政治、安全保障、人権問題、テロ防止の分野においても、もはや十分な対策をとることのできないところまで衰退しているという烙印を押されても不思議ではない。

多数派工作に血道、政策置き去りか

 日本にとって、かつてない厳しい状況のなかで行われる自民党の総裁選、各候補は、どのような青写真、構想を打ちだすのだろうか。

 総裁選の顔ぶれについては、すでに報じられているが、出馬表明している岸田文雄元政調会長、高市早苗前総務相のほか、河野太郎、野田聖子、下村博文の各氏、さらに石破茂氏の名前も取りざたされている。 

 岸田氏の政権構想は、コロナ対策と関連する健康危機管理庁新設、経済では昭和30年代の池田勇人内閣を彷彿とさせる「令和の所得倍増」などが柱。外交・安保では、「日米同盟を基軸」、「G7(先進7カ国)、〝ファイブ・アイズ〟(米英など英語圏5カ国)との連携強化」などが中心だ。

 高市氏は出馬会見で「日本の未来を拓く」と訴え、「サナエノミクス」と称して、アベノミクスのコピーともいえるプランを示した。河野氏も、最近出版した著書で「日本を前に進める」ための政策を言及した。

 9月17日の総裁選告示、29日の投票までの間の論戦を通じ、これらに基づいて、将来の日本についての夢のある構想を、自身の口から直接聞きたいところだ。多くの候補者がしのぎを削る今回のような選挙こそ、各候補間相互の真剣な政策論争が展開されるべきだろう。

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