野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2022年3月17日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

 習近平国家主席は先週、マクロン・フランス大統領との会談で、ロシアのウクライナ侵攻以来、中国の最高指導者として初めて明確な言葉を口にした。

 「ウクライナ情勢は非常に悩ましい。中国は、欧州大陸で戦火が再燃したことに深い痛惜の念を感じる」

 攻撃開始当初はロシア寄りをにじませた中国だが、最近では王毅外相が記者会見で停戦の仲介に前向きな言葉を漏らすなど、中立へシフトし始めたとの観測も広がっている。

ウクライナと中国は2013年には友好条約を締結するなど、深いつながりがある(AP/アフロ)

 米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は上院公聴会で「習近平国家主席が動揺している」と述べている。中国にとってここまでの戦争長期化は想定外だっただろう。

 短期間の戦いならば、ウクライナの被害も少なく、正常化も早かった。だが現状を見る限り、ウクライナの都市部は破壊されて焦土となり、復興には長い道のりが必要になるはずだ。仮にロシア軍がなんとか首都キエフを落として親露政権を作っても、反露勢力のゲリラ戦が続く可能性は高い。

 ウクライナは元にはもう戻らない。中国の大戦略としては、米国への対抗上、ロシア支援は揺るがせない。板挟み状態の習近平の口から漏れた「痛惜」の中には、ウクライナという欧州きっての親中国家を喪失することへの嘆きも込められている。

中国軍拡「第一功臣」ウクライナ

 中国では「ロシア頑張れ」でメディアの論調も統一されているが、実際のところ、人々の本音ではウクライナへの同情論は小さくない。なぜなら、中国とウクライナの関係は、長い目でみれば、中露関係よりもよほど親密な付き合いがあったからだ。

 米国を脅かすほどの軍事強国に成長した中国。その軍事力を作り上げるうえで「第一功臣」であると中国で呼ばれてきたのがウクライナである。

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