2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月17日

 ウクライナ情勢に目が行っている間に、米国の共和党内の潮目が変わった可能性がある。中間選挙で共和党が優勢とみられ、2024年の大統領選挙でもトランプ氏あるいはトランプ的な人物が共和党候補となる可能性がある中、共和党内で伝統的保守派とトランプ派のどちらが優位になるかが注目される。

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 トランプ信奉者たちのトランプ氏への絶対的支持が揺らいでいる兆候は年明け頃から出始めていた。支持者との集会でトランプ氏がワクチン接種を推奨すると大ブーイングが起こり、テキサス州やテネシー州、ノース・カロライナ州ではトランプ氏が推した候補がトランプ派も含め共和党支持者からかなり激しく叩かれている。

 そして今月4日、共和党全国委員会(RNC)が議事堂襲撃を調査する下院の委員会メンバーであるチェイニー、キンジンガー両共和党下院議員に対する非難決議を圧倒的多数で採択すると、マコーネル上院院内総務が激しく、それも公にRNCを批判した。

 きっかけは、選挙結果を不当に覆そうと議会をトランプ支持者が襲撃し、死者まで出した事件をRNCが「合法的な政治的論戦」と評したことである。下院のマッカーシー院内総務がトランプ擁護姿勢を変えていないのに比べ、マコーネル氏はトランプ氏から距離を置いてきたが、ここで選挙のためにはトランプ氏の力を借りたいRNCとはっきりと距離をおいた。

 時を同じくしてペンス元副大統領がフェデラリスト協会で、選挙をひっくり返す権限があるのにそれをしなかったとトランプ氏に再三攻撃されてきたが、自分にはその権限はなかったと、これまでになくはっきりとトランプ氏の過ちを断言した。

 これまで、トランプ氏に反旗を翻すと攻撃され、予備選で落選すると恐れられてきた。しかし、トランプ弾劾を支持した共和党下院議員がトランプ派候補をはるかにまさる選挙資金を調達している他、大統領選の正当性を主張したためトランプ氏が目の敵にしているケンプ・ジョージア州知事はトランプ派候補にまさる支持を得ている。アラスカ、ノース・カロライナ、アラバマ州でもトランプ氏推奨の上院議員候補が、ミシガン州ではトランプ氏推奨の州務長官候補が苦戦している。

 トランプ氏は法的にも追い詰められている。下院の議事堂襲撃を調査する委員会がトランプ氏と襲撃の関連を明らかにしてきているが、これ以外にトランプ氏は19件の訴訟や捜査の対象となっている。中でも深刻なのがニューヨーク州司法長官による金融詐欺などの刑事捜査、マンハッタン地区検察による脱税捜査、ジョージア州フルトン地区での選挙法違反捜査である。


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